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ココ・シャネルのtakのレビュー・感想・評価

ココ・シャネル(2008年製作の映画)
3.5
オドレイ・トトゥ主演の「ココ・アヴァン・シャネル」が恋愛を基礎に描いているのに対して、このシャーリー・マクレーン主演作は丁寧に伝記映画としてシャネルを描いている。「ココ・アヴァン・シャネル」で不完全燃焼だった人々には、こちらの方が向いているに違いない。

シャネルの身に起こった出来事が語られ、シャネルのファッションに対するスピリットがよく理解できる内容になっている。つまり、予備知識抜きに人間ドラマとして楽しめるのは「ココ・シャネル」ってことになるか。もし観る順番が逆だったら「ココ・アヴァン・シャネル」も楽しめたのでは、と思った。特にシャネルのファッションに対するポリシーがよく理解できた。

どうしても比較してしまうが、「ココ・アヴァン・シャネル」はエチエンヌの屋敷での生活が退屈で苦痛なものと描かれていた。対して「ココ・シャネル」では、不満はないがやりたいことをやりたい前向きな彼女の一面が強く描かれていたように思う。かといって「ココ・シャネル」が恋愛面での描写が不足かというと、さにあらず。シャネルとエチエンヌ、そしてボーイの三角関係を象徴するような、タンゴのメロディーをバックにした場面は実に秀逸。タンゴは情熱のダンスとよく言われるが、三人が踊りながら目を合わせる緊張感はたまらない。また、恋愛映画的な見方をすると、「ココ・シャネル」の方が女性がデンと構えているように思える。そのせいか男二人がシャネルに告げる愛の表現は、実に懸命。「あいつといると君を失いそうで・・・」「毎日君のことばかり考えていた・・・」ありふれているけれどそのストレートな表現が、僕ら男性の観客には身につまされる。

若き日のシャネルを演じたバルボラ・ボブローヴァは、型にはまらないシャネルという人間像をうまく演じている。そして晩年を演じたシャーリー・マクレーンは貫禄の演技。シャネルのやや高飛車な態度はファッションを創り出す自信の表れ。それを見事に演じている。脚本はエンリコ・メディオーリ。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」や「ルードウィヒ/神々の黄昏」「家族の肖像」を手がけた人だとか。人物の描写が巧みなのは納得です。

タイトルバックで、脚本は「teleplay」とクレジットされている。テレビ映画として製作された映画なんですね。
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