Omizu

NOCEBO/ノセボのOmizuのレビュー・感想・評価

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)
3.3
【シッチェス映画祭2022 コンペティション部門出品】
『ビバリウム』で注目されたロルカン・フィネガン監督の作品。シッチェス映画祭のコンペで上映、日本公開もされた。

長編三作目となるフィネガン監督だが、不思議な家を舞台にした不条理ホラー『ビバリウム』はあと一歩という印象だった。舞台だてはいいのに同じことの繰り返し、先が読めてしまう展開があまり好きではなかった。

本作もその印象は覆らず。昆虫を介在させたホラー表現は面白いが、やはり展開が読めてしまう。その先をいってくれないのが残念。

いわゆる「闖入者もの」ということになろうが、不気味さよりも不快感の方が勝ってしまう闖入者像が甘い。ダイアナの過去とを行き来するのだが、それがワンパターン。彼女に人間味を感じないのが残念。ダイアナに起こったことはある程度想像できるし、彼女の能力が明らかになった途端がっかりしてしまった。ダイアナを人間としてしっかり描けていない。

集合体恐怖症、昆虫恐怖症の人は要注意。巨大なノミが出てきたりとビジュアルの鮮烈さはあるものの、それもどこか漂白された怖さというのかな。生々しくはない。

良くも悪くも上品なホラーで、キレイにまとめないでもっとグロく残酷にしてもよかったと思う。とはいえフィネガン監督のホラー美学は『ビバリウム』から引き続き感じられるだけに悩ましい。それがこの監督の持ち味でもあるんだよなぁ。

ビジュアルセンスはとてもいいし、一つ一つのシーンが美しい。ただ展開力に難あり。先が読めてしまい、物語として面白いかというとあまり。あまりに上品にまとめすぎてしまっている印象。個人的には物語にもう少し捻りが欲しかった。作家性は存分に感じるだけに残念。
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