悪魔の毒々クチビル

テリファー 終わらない惨劇の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.7
ART

アート・ザ・クラウンの殺戮物語その2


短編時代からある程度知名度はあったかと思いますが、長編デビューを果たしてそのビジュアルと徹底したゴアシーンでより各地で認知されたこのシリーズ。
しかしながら俺はずっとスルーしてきたんですよね。と言うのも別にピエロ恐怖症ではないんだけど、このクラウンの見た目はどうにも生理的に受け付けなくて。
ただ一応観てみたいとは前から思っていたので、試しにばっちりメイクした状態のクラウンと監督のダミアン・レオーネのインタビュー動画を観て目を慣らしました。
で、観てみると監督の「メイクに毎回3時間掛かる」発言にうんざりしたジェスチャーをしたり、「今回は彼のバックグラウンドにも触れてみた」と語る監督の横で(ちょっとだけね)とジェスチャーしたり、「2では何人殺したの?」と聞かれて(数え切れないよ~)的な意味で両手をパッパッとさせるお茶目な姿のお陰で大分耐性がついたので漸く観てみました。

うん、まぁ、面白かった…です。

オープニングから景気の良いゴアで始まる期待通りの展開でしたが、同時に急にクラウンのイマジナリーフレンドみたいなのが出てきて面食らいました。
ん?となるも、取り敢えずクラウンによる殺戮シーンはどれもゴア重視の振り切り方をしていて、頭皮剥いだり目玉引っこ抜いて自分で着けてみたりと、中肉中背な身体からは想像し難いパワープレイが良かったです。
生首にお菓子入れて子ども達にあげるシーンは笑えました。「ハロウィンだから」でまかり通っちゃうのよね~。

グラサン試着パートとか完全なるギャグシーンもあって意外と笑える内容だったんだけど、そんだけおちゃらけていて反撃食らった時とか急に真顔に戻るのは最高にホラーで素晴らしいと思うの。

主人公のシエナを演じたローレン・ラベラですが、美人で凛とした雰囲気のある人でこれまた良かったです。
後半ほぼコスプレしっ放しなのもあってか、クラウンの強烈な存在感に負けないルックスでしたしホラー映えする怖がり方も出来ていました。
ただローレン自身は元々スタント出身で、複数のマーシャルアーツにも精通しているようなのでそれこそ伊澤彩織的な感じで、スタントからアクション系の作品の主演とかもやって欲しいですね。

そんでシエナの弟ジョナサン君ですよ。
彼の部屋、最初は特に何も思わなかったけどよく見たら「あれ?CHILDREN OF BODOMのポスターあるな」と気付きまして。
そのままKING DIAMONDもあるなと、思わず巻き戻して一時停止しながら探したらCARNIFEXやらTESTAMENTやらOVER KILLやらめっちゃメタルバンドのポスターが貼ってあるのに気が付いて、地味に一番テンション上がりました。

そう言えばコミコンか何かで今作のキャストが参加していた動画も観たんだけど、ジョナサン役のエリオット・フラム君がここでもPOWER TRIPのシャツを着ていたのできっと彼自身がメタラーなんだと思う。いいね!!!

一方残念だったのは無駄に長いこと。
シエナの見た夢のくだりも夢の描写にしては長すぎたし、全体的に妙なゆったりさがあって普通にダレていました。
色々と詰め込みすぎて長尺具合がしっかりかったるくなる典型でした。
あのイマジナリーフレンドもクラウンが見ている幻覚かと思いきや、普通に声変えて電話してきたりと実体がある存在なのかもよく分からなかったです。
あと意外とクラウンのキル数が少ないような。
変に期待し過ぎたのかもしれませんが、観終わってふと「そう言えばそんなに殺してないよな」と思っちゃいました。各キルシーンの描写自体は良かったんだけど。
身も蓋もない事を言えば、このシリーズは取り敢えず定期的に誰かが惨たらしく殺られてくれれば良い、みたいな所はあるので変に引き延ばさなくて良かったかなぁ。
だったらもっとメタラー弟の部屋の内装をじっくり見せて欲しかったですね。

終盤もまさかのファンタジー要素まで導入してきたりと、予想の斜め上な振り切り方をしていました。シエナのお父さんって結局何者だったんだろう。
そのままあのラストって事は、これまた良くも悪くもズルズルとシリーズを続けて行けちゃいそうな気はしますね。

初期のCANNIBAL CORPSEみたいなグジュグジュな音作りのリフで疾走するもたまに中弛みもするブルータルデスメタルかと思いきや、終盤にまさかのパワーメタル化してアツいクサメロでちょこっと最後のコーラスを盛り上げて終わるという、メタルで例えるならそんな感じの作品でした。
3も既にティーザー動画は上がっていて観る予定ですが、もうこの際ファンタジー要素は良いので変に間延びしないようにだけお願いします。