ワンコ

猿の惑星/キングダムのワンコのレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
4.1
【不吉な予感/布石】

※これを観るために猿の惑星(1968年)と2011年から始まった「猿の惑星」シリーズを観たので、昨夜、猿の惑星の映画をまた観に行く夢を見た てグッタリ。

「猿の惑星」新シリーズは戦いに次ぐ戦いの物語だ。

シーザーの死からしばらく平穏な日々が続いていたが、再び争いの種が撒かれることになる。

進化したVFX映像はさらに目を見張る映像美で物語を更に面白くしていると思う。

(以下ネタバレ)

ルイ・アームストロングは、「what a wonderful world」と歌ったが、プロキシマスは「what a wonderful day」と繰り返しシャウトする。
世界が素晴らしいなんてことはないと言っているような気もするが、実は、どこぞの新興宗教的だし、トランプが、保守系カトリックにゴマをすったり、イスラエルを過剰に擁護したりしなが、”メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン”と何度も叫ぶのとかなり似通っていて、あんまり知性は感じない。
ロジックで戦うことを放棄し、宗教に拠り所を求め、標語で喚く指導者はトランプに限らず多くいる。
日本の安倍晋三や安倍派も旧統一教会とのことを考えたら似たようなものだろう。知性は感じないし。

昨今の映画界はああいうポピュリズムに批判的なので、こうした表現はその一環かもしれない。

更に、物語は、エイプ(猿類)の中の支配従属構造と、シーザーの功績を曲解してプロキシマスが作り上げたフィクションの神話、かつての人間の知識を都合よく利用した補足、暴力の許容、同類での殺し合いの容認など実は人間社会を象徴しているようにしか思えない。

そして、ずっと虐げられてきた人間の反撃の予感で、映画は終わるが、このシリーズはどこかに終わりを見出すことが出来るのか、少し絶望的な気持ちにもなる。

mRNAによる迅速なワクチン開発が可能になった世界を僕たちは既に体験している。

不穏な予感を隠した終盤は、そんなワクチン開発や、知恵を得た猿と新型猿インフルエンザを克服するかもしれない人間との共存は可能なのか、やはり争いを繰り返すのか、ノアとメイは紛争を止められるのか、次回作のために用意されるであろうテーマはきっと重い。

長い長いストーリーだ。
ワンコ

ワンコ