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テルアビブ・ベイルートのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

テルアビブ・ベイルート(2022年製作の映画)
3.7
紛争によってレバノンとイスラエルに分断された二組の家族の悲劇を描いています。二ヶ国間の戦いの事情に明るくなくて、ややこしくなり、やっぱり鑑賞前に予習が必要でした。

ムスリムとキリスト教の対立があるレバノンで、キリスト教信者の家族はレバノンとイスラエルの紛争ではイスラエルを支持してレバノンと戦った。国内では裏切り者と言われても。

一方、イスラエルのユダヤ教家族の夫はレバノンへ戦いに行き長期に渡って戻ってこない。この夫はレバノンの家族と親しかった時があった。

しかし、結果的にイスラエルは、レバノンのキリスト教徒を自国に利用するだけで、レバノンから保護を求めてきても見捨ててしまう。

この込み入った構図の中で、監督は女性が犠牲になることを描きたかったという。愛する人と引き離される女性たちは不幸だが、私には戦地で戦っている男性の方がより命の犠牲を払っており、男女関係なく紛争でみな不幸になる。

「戦争は麻薬」という。アドレナリン出っぱなしで、緊張と興奮が続き、ハイが常態化し、刺激を求め続ける。その「快楽」を味わってしまうと、日常の穏やかな生活にはなかなか戻れない。あれほど希求したはずの平穏に退屈してしまう。それが報復を繰り返し長引かせ、両国の男性を苦しめている。思想も大義も宗教も政治も関係ない。やられたらやり返せ、である。

緊張感が続き、精神が参る男性たち。
本作でも、女性は強い。

ロードムービーではなく、少しの間、二人の女性が共に時間を過ごす。生まれてから戦争のない時間がほとんどなかったという。日常風景でも戦闘機が行き来するなか、二人のその時間は幸せそうだった。
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