TakahisaHarada

aftersun/アフターサンのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.8
離れて暮らす父娘の最後のバカンスを描いた作品。監督自身の父との関係のエッセンスを取り込んだ作品でもあるらしい。
https://fansvoice.jp/2023/05/27/aftersun-charlotte-wells-interview/
当時の父と同じ年齢になった娘が旅行のビデオを見返すという設定で、親も1人の人間だった的な、大好きなBTTFにも通じるようなテーマが描かれていて良かった。

描かれるのはリゾート地での普通の旅行で、驚くような展開があるわけではないけど、父も娘もどちらも身近に感じられて退屈せずに観れた。
ソフィの11歳という年齢が良くて、まだまだ無邪気で親に頼っているけど、一方で自意識が芽生え始める時期でもあって、ずっと見ていられる微笑ましさがあった。カラオケとか誕生日のお祝いとか、今はまだあどけないけどそろそろ最後かも、という名残惜しさも感じさせる描写が印象に残ってる。

監督は加えて親に対する見方が変わってきて、失望を覚えることもある時期だと言っていて、自分も11歳よりもっと上だった気がするし失望というほどではないけど、親に対して変なのとかこうすればいいのにとか感じたことを思い出した。ソフィが言った「パパは、ニンジャみたいな動きをやってる。たまにすごくヘンだけど、優しい」とか、懐かしいなと思いながら観ていた。

周りの人を巻き込んだりしながら「人生で一番サイコー」と言うほどソフィを楽しませて、旅行だけを切り取れば良い父なんだけどその後は…というところが切ない。ソフィを見送って扉の向こうに去っていくラストシーンがすごく印象に残ってる。
「何でも話していいんだよ」と言っていたのに何も話さずいなくなったのであれば良い親とは言えないし、幸せな家族の形を見せられなかった結果がソフィのあの境遇なので、納得感はあるけどだいぶ苦味のある終わり…と思った。ただ、思っていたより少なかった現在パートの中にあの絨毯が出てきたり、まともな家族の形ではないとはいえ子どもを授かる選択をしたんだということが分かったり、過去と未来を繋ぐ希望も感じられるのは良いなと思った。