TakahisaHarada

少年の君のTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.0
いじめられっ子の優等生少女と不良少年の青春恋愛映画。いじめ問題や受験戦争を背景にしたいい話…と思いきや後半はサスペンス的な展開になっていく意外性も良かった。

序盤、フーが飛び降り自殺したと分かるまでの描写が印象的でいきなり引き込まれる。運びながら牛乳飲んじゃう謎が最悪な形で回収されたと分かる中庭でのチェンの行動が印象に残るし、後々そこまでした理由が分かるのも良い。

こういうジャンルの作品を見ていて、出会いがご都合すぎたり、助ける側が現実離れした聖人君子すぎたりすると少し冷めてしまうけど、本作はそれがなかったのも良かった。
チェンとシャオペイの出会いには理由があるし(いじめっ子たちに待ち伏せされたことを踏まえて普段通らない治安悪めの道を通らざるを得なかった)、シャオペイはぶっちゃけ下心ありだとも言ってる。

チェン役チョウ・ドンユイの演技がすごくて、特に涙のシーンがどれも印象に残ってる。母との電話中にポロポロ泣きながら悟られないようにするシーンも健気で切なくて良いし、シャオペイがボコボコにされた日にベッドで一緒に寝たシーンも良い。シャオペイの生い立ちの話で2人して泣いて、2人とも涙が頬を伝ってたのめちゃくちゃ良かった…。終盤の無言の面会シーンの笑い泣きもすべてを悟って解放されたような、寂しさとはまた違った涙で良かった。

高考が迫っているのもあるしいじめもあって、冒頭からチェンがずっと苦境を耐え忍ぶような辛そうな顔しかしていないので、気付いたらシャオペイに抱き付いてるバイクのシーンとか、橋のシーンとか、あまり多くない楽しそうな顔を浮かべるシーンの微笑ましさも良い。

映画冒頭で社会に出たチェンを先に見せられるので、どれだけ酷いいじめがあってもチェンがそれを乗り越えたことが暗示されていて、安全圏から観ていられる感覚がずっとあったのは良かった(教師ですらなく英語教室?で教えてるように見えるので、後半のサスペンスの行方も何となく察しがついてしまったけど…)。

シャオペイが言った「君は世界を守れ、俺は君を守る」の言葉通りのラストも微笑ましくて良い。ほぼ同じような構図のラスト最近観たなーと思ったけど「アンダーカレント」か…。
若手刑事のシーンは、取調中にチェンとシャオペイを無理やり会わせたのとか、合格発表後にチェンの家訪問したのとか、そんなことする?と思ってしまった。あと、停学になったウェイたちがチェンの団地まで来て待ち伏せするシーンで、後々いじめの標的にされちゃう取り巻きがゲージいっぱいのネズミを持ってたやつ、結局使われなかったけどあれは何をするつもりだったんだろう…。