Finn

aftersun/アフターサンのFinnのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
子供の頃に父と過ごした一夏の思い出を、20年後にホームビデオと共に振り返るヒューマンドラマ。

タイトルの"Aftersun"は「日焼け後に塗るローション」で、作中でも印象的なシーンとして登場。
そして本作は過去を振り返って父を理解しようとする作品なので、そういう意味でもピッタリなタイトルだと思いました。

直接的な説明は一切なく、父と娘のホームビデオを覗き見しているような感覚になる作品。そこから何を読み取るのか、何を読み取れるのかは観る人によって変わってくるかも。
昔のカメラで撮ったようなザラついた映像が懐かしくも、ちょっと心がザワザワする感じを良く表してるなと思った。

劇中で流れる音楽が良かった。
特にQUEENとディビッド・ボウイがコラボした「Under Pressure」の使い方が秀逸!歌詞とシーンが見事にマッチしててなんとも言えない気持ちになった。。

父と娘を演じた役者さんたちがすごく上手で、繊細な感情を表情や台詞の間で表現していて素晴らしかった。

前半は本当にただ2人のバカンスの様子を見ているだけという感じなので、退屈に感じる人が多そう。でも後半になるにつれて「こういうことなのかな」っていうのが見えてくるので、最後まで観てほしいです。


以下ネタバレ含む感想


父カラムはメンタルが不安定で、恐らくソフィと別れた後に自殺で亡くなってしまったんだと思う。

私自身も含め身近な人を自死で亡くしている人は分かると思うけど、残された人はどうしてその選択をしたのか理解できないから明確な理由を探そうとしてしまうし、何かできたんじゃないかって後悔に苛まれてしまうのよね。
ソフィもきっと何度も何度もビデオを見返して、父に何があったのかを探そうとしてきたはず。

監督のインタビューを見ると、カラムの苦悩している姿のシーンはソフィが当時の父を想像しているという感じらしいので、ソフィ自身が「こんな事があったんじゃないか」と自分なりに答えを出して納得しようとしたってことなのかな。
ソフィの記憶にもビデオにも楽しかった思い出と優しかった父の姿だけが残っているけど、大人になっても自分にも子供ができた今、改めてビデオを見て父の苦悩に少しだけ寄り添うことができたのかも。

説明も答え合わせもないから複雑で分かりにくいしスッキリする作品じゃないけど、じんわり心に残る不思議な作品でした。
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