眠る猫

ロスト・キング 500年越しの運命の眠る猫のレビュー・感想・評価

5.0
待ちに待って、やっと我が町にやってきたので鑑賞。

リチャード3世といえば、やはりシェイクスピア戯曲のイメージだった。

リチャード3世の遺骨が駐車場から発掘されたというニュースは強烈な記憶として今も覚えている。
側湾症だったようだというのも、あぁ…と思った記憶がある。

ごく普通(持病は抱えているが)の主婦フリッパが
とある舞台でリチャード3世に共鳴するところから話は始まる。
戯曲のイメージで悪者にされてしまっているリチャード3世と病気のせいで評価されない自分を重ね合わせてしまったのだろう。
素人ながら本を読み、専門家を訪ね、協会にも入会し、初めは耳を貸さなかった元夫も途中から後押しをしてくれる。
この元夫と息子2人がなんと良くできた人だろう。
肩書きもない、力も無いが故に大きな組織に阻まれ、手柄は彼らのものになってしまう。
途中から涙が止まらなかった。

フリッパが駐車場のRの文字の上に立った時、なるたる偶然!なんたる偶然の一致!と見ているこちらまでドキドキしてしまった。
「好き」という感情はどこまでも人を強くさせるものなのだと改めて思う。映画の宣伝コピーの「推し活」という言葉では言い表せないと感じた。

映画の中ではレスター大学が悪者になってしまっているけれど、レスター大学の力がなければ実現しなかったのも事実。

大きな業績の影には、こうした名もない力を持たない人の努力と行動が常に隠れているもの。光が当たっているのはほんの一握りの頂点の人だけ。

歴史は勝者が作る。勝者のプロパガンダ。そう言われてしまえば元も子もない。しかし、それは事実。
嘘も時が経てば真実になる。
何が真実かなんて誰にもわからない。
シェイクスピアは罪作り。だけど、それもテューダー朝に書かれたもの。

ではエドワード5世とその弟を殺したのは誰か?
もしかしたらやっぱりリチャード3世だったかもしれないし、ヘンリー7世かもしれないし。
見つかった遺骨のDNA鑑定してリチャード3世のものと確定したのだから、ロンドン塔改修時に見つかった子供の遺骨も鑑定すればいいのにと思ったりもするけど、進化した科学で全てが明らかになるのも良いことがどうかはわからない。
(現に父親が違うなどということがわかったりして、そうなると王族の正当性とかややこしくなるし)

映画としてもとても面白かった。
リチャード3世について本を読みたくなった。

今度渡英したらレスターに行ってみようかな。
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