ちこちゃん

ロスト・キング 500年越しの運命のちこちゃんのレビュー・感想・評価

4.0
リチャード三世の遺骨を探す1人のアマチュアの女性の実話をもとにした映画。

通説、俗説、定説、それらは、人の口やあらゆるメディアを通じて流布され、時にはこのリチャード三世のように、シェイクスピアというような権威によって包装され、人々の思考に浸透していくものです。
事実とは何か。情報というものが、切り取られ、人によって取捨選択され、解釈をともなって伝えられる性質である以上、そこに必ず人の認識の影響を排除することができず、恣意的な意図に左右されるものです。伝えられる情報は一部分であり、伝えないことを選択されため、敢えて伝わらず隠匿される情報もありうるのです。加えて、集団を操作して、ある方向に向かせたいがために、または、集団が自らを守るために、情報を意図的に加工することは、昨今のメディアのニュースの中身を見ても明らかです。
我々はそのことを前提にして、情報を受け取る必要があるでしょう。

そんな、事象にアマチュアながら、果敢に取り組んだ女性の話です。当然ながら、定説に異を唱える彼女は、変人扱いされ、また好事家であるために、素人扱いされてしまいます。しかし、そこに怯まず、偏執的なまでに、そこに打ち込むことにより、リチャード三世を見つけ出します。
リチャード三世の幻想を観る程に、仕事も投げ打って打ち込まなければ、定説を打ち破り、新たな真実を打ち立てることはできないという困難さも描かれます。

いろいろな意図を持つ政治家、メディア、はたまたXで何万人のフォロワーを持つことで、あたかも真っ当に見える意見や批評をする人々、そして玉石混淆の膨大な情報を吐き出すネット、それらに囲まれて暮らしている現代を生きる我々がいかに寄るべない存在であるか、しかしそのよるべなき市井の人間であっても、事実に近づけることができるという希望を示した映画と言えると思います。
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