被害者遺族の心情は一言では語れないだろうし、人それぞれなのでしょう。松村のようにその責任の一端を強く感じ、あの時ああすればとかああしなければとか悶々としてしまう人もいるのでしょう。被害者家族なのにあらぬ誹謗中傷を受けることもある。そんな松村の日常を追いかけることでちょっとは被害者家族に寄り添えたのでしょうか。ところどころに挿入される、娘が生きていたらという松村の妄想は彼の理想の家庭だったのでしょうか。今度の休みに遊園地へ行こうという約束があったので遊園地で家族で遊ぶシーンもあるのだろうかとちょっと期待したけどそれはなかった。父親を無視して彼氏と遊ぶ大きくなった娘の姿は理想とも思えなかったがそういう苦労もしたかったということなんだろうか。あまり羽振りのよくない工場の様子は、これは現実だということに引き戻す効果はあった。被害者遺族同士が傷をなめあうような面会は、被害者の会のような皆が集まる場所以外で個人的に行われることってあるんだろうか。加害者の家族だってそれぞれの人生がある。様々な嫌がらせを受けているのに、加害者への復讐のため加害者家族を殺すのはやはり許されない気がする。全体的には悶々と鬱積した感情が現れていて面白い作品でしたが、すれ違う女子高生から始まる生きていたら高校生になっていた娘の妄想はなんか全体の空気とかなり違っていて違和感を覚えてしまった。遊園地のシーンが欲しかったなあ。
