染夫木智也

少女は卒業しないの染夫木智也のレビュー・感想・評価

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
5.0
キラキラなまぶしい恋愛映画ではなく、いろんな世代やいろんな人に響く青春映画。

2018年に今田美桜さん主演の短編映画「カランコエの花」の中川駿監督の長編デビュー作。
※カランコエの花はLGBTをテーマにした映画祭にていくつか受賞しており、教材になるほどの名作でした。

STORYは廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えたとある高校で行われる卒業式まで二日間の話。
「進路の違いで彼氏と離れ離れになる少女」
「中学から密かにずっと片思いを続ける少女」
「クラスに馴染めず、図書館に通うことで先生へ好意をもつようになった少女」
「伝えたくても伝えられない想いを抱えている少女」
想いを抱える4人の群像劇。

まず女子高生の物語のため「少女漫画のようなキラキラしかない恋愛映画だから見ない」と決め込んでいる人はぜひ見てほしい。
喜びから悲しみまで繊細に描かれていて、10年以上前の高校時代を思い出させられるような映画。
登場人物と同じ経験をしていなくても、あの時、あの卒業式の日に、こういう同級生がどこかにいたかもしれないと共感させられるような素晴らしい内容だった。

タイトルの少女は卒業しないに対する、さまざま思いから卒業して、あたらしい一歩へ進もうとする4人の姿もよかった。

監督自身もインタビューで答えていた原作との違いについて。
原作は卒業式当日の朝か夜まで1日をリレー方式で7つエピソードで構成されている話なんやけども、本作はその中から4つの話をピックアップしており、うまく関連づけて並列に物語を進めるよう脚本されていたのが、見事見事見事過ぎる。また、4つの話も原作とは異なる卒業式前日の話も含まれており、そのまま映像化したのではなく、映画として再構築されているのが素晴らしかった。
なので、原作と映画それぞれ楽しめる内容となっているので片方しか味わっていない人は両方見てほしい。

キャスト陣もすばらしかった。
河合優実さんの雰囲気に引き込まれたし、他にもアルプススタンドの端の方にでたいた小野莉奈さん、ヤクザと家族に出ていた小宮山莉渚さん、中井友望さんの4人に加え、窪塚陽介さんの息子である窪塚愛流さん、Charaさんの息子である佐藤緋美さんも出演されているという、これから絶対いろんさ作品にでてくるであろうキャスト陣もすばらしかった。


また、劇中に流れる女性2人のうた「片耳にカラスムギ。」の「靴の音に淡い影」がめちゃくちゃ親和性高く、素晴らしかった。
鑑賞後、YoutubeでMVめっちゃみています。

あらたな青春映画の名作だと思うけど、これが中川駿監督の長編デビュー一本目ってすごすぎるので今後の活躍にもめっちゃきたいです。