教授

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!の教授のレビュー・感想・評価

-
個人的には「大傑作」と言われる「スパイダーマン/アクロス・ザ・スパイダーバース」よりも本作の方が無邪気に好きだし、感動もした。
という意味で、両者はとても比較しやすいと思う。

「スパイダーバース」が取りこぼしていたもの(それは作品上仕方のない部分)。
それはポップさと、ストリート感を担保する「荒削りさ」と、コミックヒーローとしてのバランスに尽きる。
本作はまるで「スパイダーバース」の一作目に衝撃を受けた時のような原初的な映像的カタルシスの再現を観たような感覚。

大前提としてアニメーションとしての「画力」の巧みさはあるのだが、その質感たるや「落書き」に似たゴテゴテ感。
筆圧が強く、輪郭がハッキリしたキャラクターの質感に加えて「汚し」を感じる背景がストリート感を強く醸し出している。

作劇として「王道ヒーローもの」+「ティーン・ムービーとしての青春もの」の精度もブラッシュアップも行き届いていて。
タートルズたちの、ティーン故の無邪気な正義感の暴走めいた側面。
脅威から目を逸らして「守る」という大義に囚われるメンターのスプリンター(ジャッキー・チェン)の家父長的態度の解体。

何より「脅威」の正体であった人間との邂逅と和解がラストのバトルによって昇華する描写、特に「孤独ではないのであれば、対立する理由はない」とヴィラン側がスーパーフライ(アイス・キューブ)を除いては戦意を喪失する辺りは新鮮。
加えて、脅威の存在のひとつである「人間」も、基本的には救いようのない存在でありつつも、ある局面においては、利他的に行動するというヒーロー映画らしいテーマを表現した「共闘」シーンは感動的。

洗練よりも「荒削り」で、崇高さよりも「ポップ」であることを最優先して、王道の物語に「魂」を吹き込もうと腐心することを最優先にした、と感じられる作風に心が動かされる。
教授

教授