ひこくろ

ゴールデンカムイのひこくろのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.0
(原作未読、アニメは見ていた派の感想です)

漫画・アニメの実写化は、ある一定の方向に答えを見出したのかな、と感じる映画だった。

元となる作品がある場合、とかく再現性ばかりが注目されがちだ。
特に漫画やアニメの場合はその傾向が強く、似ているかどうかだけで評価されてしまったりもする。
しかし、本来、映画にとって原作の再現性なんて大した問題ではないと思うのだ。

原作があろうとなかろうと、映画を観た感想は、突き詰めれば、面白いか面白くないかでしかない。
原作のシーンをどんなに忠実に再現しようと、面白くなければその映画に価値はない。
観客は物真似やコスプレを観に来ているわけではないからだ。

それを誤解して、とにかく原作のシーンを再現しようと必死に努めている作品もある。
その真逆に、なんでこの原作を使ったんだと言わんばかりの改変を加えて映画のオリジナリティを生もうとしている作品もある。
どちらもが、原作のある映画には不適切だろう。
映画としては、原作に沿って、映画ならではの世界観を構築することが重要なのだ。
そう、この映画を観ると思わされる。

似ているかどうかよりも、そのキャラが映画の世界観に馴染んでいるかどうか。
キャラとしてではなく、人間として、物語を構成する要素として、生きているかどうか。
これはリアリティという問題ではない。
どんなに漫画やアニメっぽくあっても、嘘っぽかったとしても、映画の世界観に合っていればいいのだ。
もちろん、この映画でもキャラは特徴づけられ、見た目も原作に近づけようと努力はされている。
でも、それらは同時に、この映画に必要不可欠なものとしてちゃんと描かれている。

こういう方向で作られる映画は昔から細々とあったが、主流になってきたのは、やはり「キングダム」のヒット以降だろう。
そう考えると、主役の山崎賢人の起用も頷ける。
事実、上辺だけでなく、杉元という人物をきっちりと浮かび上がらせた彼の演技は見事だった。
同様に、アシリパ役の山田杏奈も素晴らしい。
こちらも、変に原作に寄せるのではなく、ちゃんとアシリパという人間を立たせていた。

アクションシーンのこだわりも見逃せない。
冒頭の二百三高地戦では、大画面に大量の人間が出てくるだけで迫力を生むという映画の良さが存分に活かされている(これも「キングダム」で試みられていた)。
対個人戦には、漫画でもリアルでもない、この映画の世界観ならではの現実味があって迫力があった。

正直、実写化の発表と、キャスティングが公開された時には、ほとんど期待感はなかった。
でも「面白い映画を作ろう」という強い意志と、全員が映画の世界観を作ることに尽力しているのが伝わってきて、面白かった。
これが漫画やアニメの実写化の正解だとまでは言えないが、ひとつの答えであることは間違いない。
この先、このタイプの映画が増えていくような気がする。
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