ともじぇり

あちらにいる鬼のともじぇりのレビュー・感想・評価

あちらにいる鬼(2022年製作の映画)
3.0
数年前、寂聴さんの講演会を拝聴する機会があった。
会場の人々からの相談を、時にユーモアを交えサクサク答えていく寂聴さん、大好きでした。
相談内容の多くは、夫婦問題や親の介護など、私の悩みとどれも似ていて、泣きそうになった事を覚えている。
出家を決めた時の話もしてくださった。
その時に炊いてもらったお香の香りの話は、まるで源氏物語の一文のようで、流石、作家だなーと…感激した。

そんな寂聴さんを「鬼」と表現して許されるのは、不倫相手の娘であり、原作者の井上荒野さんだけではないだろうか。
本では、妻であり作者の母である笙子の葛藤や、知的な人物像が丁寧に書かれていて、母に対しての娘の愛を感じた。

映画は寂聴さん側の物語が中心だったので物足りなかったが、最後のタクシーのシーンの演技は素晴らしかった。

愛憎を押し殺して普通に振る舞うのって、
本人達は相当キツかっただろうな…
その心の葛藤を映画でも深く掘り下げて描いてほしかった。
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