アトミ

聖地には蜘蛛が巣を張るのアトミのネタバレレビュー・内容・結末

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

50点

「人は避けたいことと出会うものだ」イマーム・アリ

イラン。
聖地マシュハド。
娼婦が殺される。
犯人(顔は見えない)は原チャリで死体を運び、人気のない場所に遺棄した。左手薬指の大きな赤い石の指輪が街灯に照らされる。
犯人は夜の街へと帰って行く。
街の灯りはまるで「蜘蛛の巣」のように見えた。

『ホーリー・スパイダー』


テヘランからマシュハドにやってきた女性記者アレーズ・ラヒミ(マシュハド出身者)。
ホテルでは未婚女性が1人で宿泊する事を嫌うため予約していたラヒミだったが「システムエラー」とか理由をつけられ断られる。
が、ジャーナリストIDを見せると「システムエラーは直りました」と宿泊が許された。

この半年、街中が恐怖でピリピリしている。
手がかりは未だにゼロ。
が、犯人「スパイダー・キラー」はマシュハドのホラサン紙犯罪記者シャリフィ宛に1人殺す度にTELをかけてきている(記事にして欲しい)。
殺人を「腐敗に対する聖戦」として正当化。
話していると凶悪犯罪者ということを忘れてしまうほど明るく、気さくな時があるが、凄い剣幕な時もあり毎回変わる(コレらはシャリフィは記事にしていないゆえラヒミにも口止め。宗教的要因が強いため上からの命令)。
それを聞いて余計に火がつくラヒミ。
シャリフィから録音してあったTEL音声を聴かせてもらう。

そんな犯人。
名はサイード。解体屋。
スパイダー・キラーの新聞記事をチェックする。
妻と3人の子持ち(犯人探しミステリーかと思いきやアッサリ登場)。

捜査が進んでいない警察に取材に行くラヒミ。アレコレ指摘した事で責任者のロスタミに「我々の仕事は簡単とでも言いたいのか?お前がやるか?」とキレられる。
中央からの重圧、議員、知事、署長からの苦言。警察も思うように動けないようだ。

ラヒミはタバコを切らしたロスタミにマルボロを差し出し、事件簿を見たいとお願い。
ロスタミは「どこかで会って話そう」と持ちかける。


夜。
サイードは娼婦を品定め。
町外れで年老いた娼婦をケツに乗せ連れて行く。

翌朝。
公衆電話からシャリフィにTELし「遺棄現場」と「正当性」を伝える。

車中。
シャリフィは犯行の手口には「娼婦のヒジャブを二重に結び、それで絞殺(10人全て)」という共通点があると話す。
犯人野放し状態に「誰かがかばっているとしか考えられない」と陰謀を感じるラヒミ。

裁判所。
2人は判事の意見を聞きに行く。
とりあえず今回の事件。
世間的にはスパイダー・キラーの「浄化」に対して「当然」だという声が沢山上がっている(イスラム法「ファトワー」を実行してるだけで殺人ではない)ことをラヒミが伝える。
判事は「神の目には一人一人の命が神聖。当然彼女達は死に値しない。売春は社会問題。政府が市民を守るべきだ。仮にイスラム法でも解釈の問題であり法的判断ではない」と答える。
良い意見が聞けたと思う2人。
ラヒミら事件簿を閲覧したいとお願い。
が、判事は「なぜこの事件にこだわる?君の仕事は情報提供であり、社会を恐怖と混乱にさせることじゃない。醜聞に変えたら許さないぞ。どうも厄介者のようだ。態度に気をつけたまえ」と釘を刺されてしまう。

街。
ラヒミは「娼婦達にインタビューをしたい」と提案。が、シャリフィは彼女達は薬漬けだし、嘘つきだかさ信用にならないと反対。
と、シャリフィはラヒミがテヘランの新聞社にいた頃の編集長との噂について質問。
ラヒミは編集長から言い寄られ、それを上に相談。が、処分を受けてクビになったのは自分だったと語る。
「自分の姿を重ねる」的にラヒミは今回の事件に執着するのだった。

そんな中。
久しぶりにサイード宅を訪れた退役軍人仲間のハジは痩せたしソワソワと様子がおかしいサイードを心配。
サイードは「仕事で悩んでいる。何も成し遂げないまま人生が終わってしまう」とそれらしい理由を話す。
ハジは気分転換にと自分の車を貸す。

夜。
ラヒミは娼婦のゾグラ(人見知りな感じ)と知り合い、話を聞く。が、ゾグラは何も答えず行ってしまう。

ホテルへの帰り道。
ラヒミは1台のバイクにつけまわされる。
怖くなって隠していたナイフで脅し、ホテルへ何とか逃げ帰る。


翌日。
サイード一家はハジの車でドライブピクニック。広場でサッカー。
が、長男アリの蹴ったボールがサイードの後頭部に直撃してしまう。
ブチ切れて折檻しよう追いかけるサイード。が、上手く捕まえられず情けなくて泣いてしまう(超情緒不安定)。

帰宅途中。
サイードは突然「仕事を思い出した」と妻ファテメと子供達をファテメの実家に降ろし、娼婦狩りへ。

夜。
サイードが運転する車。
助手席には娼婦ゾグラ。

自宅。
サイードはリンゴを食べているゾグラを背後から襲い、絞殺(リンゴはソファーの下に転がって行く)。

ゾグラの死体にムラムラするサイード。
が、我に返って神に許しを乞う。
と、突然ファテメが帰宅。サイードは慌てて死体を絨毯に包んで隠し、何とか誤魔化す。

久しぶりに2人きりになってムラムラファテメはサイードを誘惑。ファる。
サイードは腰を動かしながら絨毯の隙間から出ている死体の足を見て、益々興奮する。


翌日。
死体遺棄現場。
取材に訪れたラヒミとシャリフィ。仏さんがゾグラだったためラヒミゲロ。
サイードは野次馬に混じり様子を伺う。

夜。
ホテルに戻ったラヒミ。
部屋にロスタミが訪問(現場での事を聞きつけて)。
ラヒミは今朝の現場取材許可に礼を言う。
ゾグラは妊娠していたようだ。妊婦が売春とか反吐が出るわとロスタミ。
不快になったラヒミはロスタミを帰そうとする。
ロスタミはラヒミに詰め寄り「お前は尻軽で新聞社をクビになった淫乱。そういう女だ」と耳元で囁き、部屋を出て行く。


翌日。
ソファーの下で見つけた「かじった跡のあるリンゴ」で遊ぶ末っ子長女ハディジェ。
ビックリして「ゴミだ」と言って窓から投げ捨てる。
ハディジェは「なんでゴミ箱に捨てないの?」と質問。サイードは「本当はゴミ箱だけどほり投げるのは楽しい」と言い訳。
ハディジェはママにチクって「私も投げたい!」とおねだり。ファテメは「真似しちゃだめ」と言い聞かせる。
サイードは他に何か残ってないか部屋を探す。

その頃。
ラヒミはゾグラの母親宅を訪れ、取材を申し込むが、母親は「ゾグラって誰だい!」と娼婦な娘を「恥じる」が泣き崩れるのだった。

母親宅。
落ち着いた母親から「清掃員ラスールが犯人のバイクに被害者が乗るのを目撃してる」という情報をゲット。
母親はゾグラに「バイクには乗るな」と注意していたが、ゾグラは犠牲になってしまったのだった。
ラヒミは警察に相談した方がいいとアドバイスしたが、母親はジャンキー。しかも「街を浄化してるヒーロー」を警察が捕まえるわけない。と、あきらめている。

夜。
ラヒミは広場で清掃するラスールに取材を5、6回は見てるらしい。
毎週木曜日にバイクで現れ、信心深い民兵に見えたと話した。

ラヒミはシャリフィにTEL。
が、警察は信用ならないからと協力を拒み、シャリフィに「計画の協力」を促す。

そんな中。
サイードは次なるターゲットをゲット。
今回はおデブちゃん。
自宅へ連れ込み、首を絞めるも全く歯が立たない。逆にそういうプレイが好きなのかくらいに遊ばれる。
一旦バスルームへと避難し、気を落ち着かせ「力を!」と神頼み。
元気玉的に神からパワーを授かったサイードはおデブちゃん娼婦を何とかかんとかぶち殺す事に成功。
が、運び出すのにめっちゃ苦労。
階段からずっこけて左手をケガ。

その頃。
ラヒミは娼婦になりすまし、広場で犯人が来るのを待つ。
が、空振り。


翌々日。
今回の事件が新聞に出てないことを知ったサイードは苛立つ。

夕飯。
ファテメの実家で食事。
ファテメに怪我を聞かれ仕事でヘマをしたと誤魔化す。

その夜?
毎回「おとり捜査」が空振りに終わっていたラヒミだったがやっとスパイダー・キラーらしき人物に声をかけられる。
サイードは疑いもせずラヒミをケツに乗せ出発。シャリフィはバイクを追跡。
が、入り組んだ迷路のような路地でバイクを見逃してしまう。

サイード宅。
ラヒミはトイレに入り、恐怖に震えながらカセットテープで録音開始、ナイフの準備をしておく。

リビング。
素人臭いラヒミに余裕シャクシャクのサイードはラヒミに近づき、ラヒミの首元に手をやる。
「殺される」と感じ、パニックラヒミは必死に抵抗。大声で騒ぎ、ナイフを取り出しドアのロックを開けるように要求。
サイードはラヒミを落ち着かせながらドアロックを解除。
とれスキをついてナイフをたたき落としラヒミに乗りかかり、首を絞める。
大ピンチラヒミだったがサイードの左手の怪我を攻撃し、何とか脱出。
窓から大声で助けを叫ぶ。ご近所さんが「何事だ?」とワイワイ騒ぎ出す。
ラヒミは「大声出されたくなかったらトイレへ入れ!」と命令。観念したサイードが指示通りにしトイレに入った所でトンズラ。
サイードはラヒミの靴や証拠になるようなものを隠す。
が、「ついにバレてしまう」と布団に丸まり嗚咽。


翌日。
警察がサイードを連行。
混乱する家族。

裁判所。
判事とロスタミは事件に着いてをメディアの前で報告。
称賛されているラヒミは一躍有名になるだろうとシャリフィ。が、「陰謀」が拭いきれないラヒミ。

独房。
サイードは激しく降る雨音に気が付き、鉄格子の隙間から外に右腕を出す。
が、外は雨など降っていない。
が、引っ込めたサイードの右腕は雨でびちゃびちゃに濡れていた。
サイードはその雨で顔を清め、神に感謝。

サイード宅。
ファテメはアリの質問(逮捕理由)に答える。
「不潔、性根が腐っててなんの価値もなく、薬までばらまいている女達。殺されて当然。無罪よ」と説明。

食料品店。
買い物するアリ。
店長は「タダでいい。サイードには世話になったから」と応援してくれた。

裁判。
サイードは社会道徳の乱れを正す責任感が働いたと証言。
傍聴者らを含め、沢山の人々がサイードの行いに対して「正義」だと認識。
被害者の親は娘が「娼婦でヤク中」と人前で認める事も拒んだ。
逆に死んでくれて良かったとも(実際は逆)。
被害者は貧困層。金で解決(死刑より賠償金)した方が現実的。サイードを許せば金をやるという支持者も現れていた。

弁護士事務所。
弁護士は「政府は次の選挙前には判決が欲しいため司法も動きが早い。支持者も多いゆえ精神鑑定(無罪)に持ち込もうとしている」とファテメを安心させる。
が、アリは「精神異常」とされることに納得いかない。

ハジも世間の声(無罪)と逆判決は出せないとファテメを安心させる。


裁判。
サイードは前線で戦いでトラウマを負い、またその以前から精神疾患があったとの医療記録があるとの弁護士の説明を考慮する判事。
が、サイードは「俺は正常だ!逆に神を狂信する異常者だ!」と言い放ち退廷させられる。
ザワつく法廷。

面会。
悲しむファテメ。
が、サイードは支持者のためにも「異常」とは言えないという強い思いがあった。
アリは「正義の裁き方(殺害方法)」に興味があった。サイードは迷ったが詳細を話した。

サイード宅。
ラヒミとシャリフィはファテメにインタビュー。
ファテメは「夫は使命を果たした」と答えた。
アリもインタビューを受ける。


裁判。
検察は死刑を求刑。
サイードは教典の一文をペルシャ語で読み「正義」をアピールした。

裁判所の外。
沢山の支持者が「サイード無実」を訴える。
それを見てアリは誇らしく思う。

その頃。
ラヒミとシャリフィはサイードにインタビュー。「声」しか知らなかったシャリフィとあの時の娼婦。サイードは「同窓会」だと笑う。
「後悔は仕事をやり残したこと。支持者が沢山いる。まだ終わっていない」と語る。


翌日。
サイードに死刑判決(鞭打ち100回も)。

独房。
ハジと検事(ハニガ)が現れる。
ハニガ検事は「裁判は演技」だったと説明。
ハジは「死刑執行日に中庭に出て用意してある車で逃げろ。完全な極秘だぞ」と策を伝える。
喜ぶサイード。ハジと握手。
と、ハジとハニガ検事が消える。


死刑執行日。
面会。
泣き崩れる家族。
サイードはアリに「お前は長だから泣くな」と叱る。「全ては神の意思だ」と。

執行室へと連れて行かれるサイード。
が、廊下の途中で見届けようと待っていたラヒミが「鞭打ち100回は?」と指摘。
サイードは近くの部屋へと連れて行かれ鞭打ちされる(廊下に響く音と苦痛の声)。

部屋の中。
壁に鞭打ちする刑務官と笑いながら苦痛の演技をするサイード。

そして執行室へ。
ラヒミは見届け人としては許可されず「後で遺体を見せる」と判事に説明される。

執行室。
サイードは中庭に出て行こうとするが取り押さえられ、後ろ手に手錠をかけられる。
慌てるサイード。ハジを呼び抵抗。
が、サイードは首にロープをかけられ死刑執行された。

夜。
シャリフィはラヒミをバス停まで送る。
別れ惜しむシャリフィ。ラヒミは頬にキスし、バスへ。

バス。
ラヒミは先日録画した「アリのインタビュー映像」をハンディカメラでチェック。
アリは支持者に「後を継げ」と言われたらしく満更でもない様子。
そして妹ハディジェを娼婦役にして「正義の裁き」を実演して見せたのだった。
ハディジェも「遺体よ」と笑う。






というお話。
犯人探し楽しそ
と思いきや前半で早々披露。
そこが主題ではないにしろじゃあなんでわざわざそんな前半にしたのかな?

ラストはイカスけど中だるみがヤバイ。
飽きてくる。
アトミ

アトミ