染夫木智也

ザリガニの鳴くところの染夫木智也のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.0
タイトルからゲテモノ映画かと思ったら、”少女の成長物語” × ”殺人の犯人探し”が融合した完成度の高い作品


監督はNetfrixにて配信されている「ファースト・マッチ」にて長編映画デビューされたオリヴィア・ニューマン監督。

原作はディーリア・オーウェンズさんの小説であるんやけども、実はこの方は元々小説家ではなく動物学者しており、69歳にして初めて小説を制作されたのが、この「ザリガニの鳴くところ」。
2019年、2020年の2年連続で、アメリカで最も売れた小説で、2022年の今、全世界で1500万部売れたという超ヒット小説だった。

初めて本作のタイトルを聞いた時に、"ザ シスト"のようなB級映画をイメージしていたけど、予告を見た全然違うこと気づき少し恥ずかしくなった。

物語は、1969年にアメリカのノースカロライナ州の湿地帯である青年の死体が発見される。容疑にかけられたのは湿地帯の小屋で1人で暮らす、少女だった。実はこの少女は、幼い頃に父親のDVのせいで、家族全員バラバラになり、学校に通うこともできず、町の人からも冷たい扱いをされていた。この少女がどうやって成長しているのか?そして、本当にこの少女が青年を殺したのか?という内容となっている。

社会的弱者の少女の成長物語×殺人の犯人探しというサスペンス要素が融合におり、想像を超える完成度の高い印象を受けた。


湿地帯の小屋で1人で暮らす、なんとか貝をひろい売って生活費を稼いだり、偶然出会った男の子から文字を教わり、そのから恋が芽生えたり、できるだけ人と関わらない環境でも、なんとか生き抜こうとする少女の力強さは見応えがあった。
それに加えて、サスペンス要素。
「こんな女性に証拠を残さずに殺人はできんやろ」と感じさせられる冒頭の雰囲気から、成長姿を見るにつれて、「あえ?これ、殺してるかも?」とあらためさせられる行動や、「いや、これこっちが犯人かも?」と細かく散りばめられたパーツに観客としてハマって、どんどん物語に惹きつけられてしまった。

そして、この作品の見どころの一つである「目で楽しめる映画」という要素。
原作者が動物学者のためか、舞台となるノースカロライナ州の湿地帯に存在する、草や花、鳥などの生き物などが非常に美しい。また、主役のデイジーエドガージョーンズさん。この俳優さんは見るからに”超美人”という雰囲気ではないけど、見た目タイプじゃないけど、ずっと見ていると可愛く見えてくる魅力を持つ俳優さんなのか、物語が進むにつれてどんどん、魅力に感じた。

あと、エンドロールに流れる曲は、原作の小説のファンということで、テイラー・スウィフトがオリジナル制作された「キャロライナ」。
作品と曲調もあっていて、よかった。
(カタカナ表記がカロライナなのか、キャロライナなのかはちょっと気になるけど)

最後にタイトル「ザリガニの鳴くところ」について、これは原作のディーリア・オーウェンズさんが母親から言われた比喩表現らしく、ザリガニがなくくらい自然に満ちたところ、本作では主人公の少女にとっての「安全な場所」を意味している気がした。

このタイトルは劇中にセリフとして用いられるんやけど、めちゃくちゃそのシーンが良く、一番印象的に残ったシーンだった。

正直、ラストの展開はちょっと予想ができてしまったので、がっつりミステリーを求めている人にとっては物足りないかもしれないけど、全体的に完成度が高い映画なので、気になった人はぜひ見てほしい。