Kensho

夜ごとの夢のKenshoのレビュー・感想・評価

夜ごとの夢(1933年製作の映画)
4.8
実際に二人には遠近感がありながらも、相対する人物がフレーム内で向き合っている(ように見える)画角は成瀬の得意とする画面構成であり、その中で人物の機微に合わせてフォーカスが切られていく。

栗島すみ子は髪を触ると女になり、とたんに男の衆人環視の的となる。

そして彼女が強情な権力者に金貸しを唆された際、ふと立ち上がると男よりも随分と高く見えるのだがやはり、直後に土間に降りると男よりも随分小さくなる。

その瞬間男は栗島すみ子へと言い寄り、金のオルタナティブとしての身体を欲望する。

また、子供が事故に遭い、そこに駆けつけた一同の視線は子供を中心に次々と交錯し合い、観るものはその異常なまでの視線の執着に唖然とさせられてしまう。

成瀬巳喜男にとって、落下することは一大事なのである。それはこのフィルムのようなおもちゃの車であれば子供に事故が起こり、階段を上る女を捉えたフィルムでは、透明なコップの落下によって女の純真が奪われるのだ。
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