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暖流のinumuraのレビュー・感想・評価

暖流(1957年製作の映画)
4.0
セリフが聞こえづらいところもあったけど、それでも話の流れがわかるって良い映画の証拠。
品ばかりある頼りない母、しっかりした娘、ちゃらんぽらんの兄…なんだか太宰の斜陽みたいだ。戦後はきっとこの組み合わせが少なからずいたんだろうな〜。最高殊勲夫人でも出てきたけど、この頃の一番イケてる職業ってテレビなのか。丸山明宏が唐突に出てくるのも相手役の子が婚約者の愛人としてつながってくる人物配置が気持ちいい。テレビを「かける」って言うのね。今度から使お〜
何といっても階段をはじめとした段差を利用した人物の動き方、流れ、極めて意識的なのに不自然でなくて素晴らしい。
どんな結末になるのかと思いけや、なんて現実的で寂しいの…。砂浜を笑いながら、逃げるように駆けおりていくのは名シーン。オールドミスを嘆きつつも、知的で自立している啓子。割を食う役回りだが決して惨めではない。日疋に恋して追いかけ回すぎんも、うざったいキャラクターにおさまらないで底抜けに明るく、美しく、嫌いになれない(あぁ彼女の名前ってぎんだったんだ…劇中で名前があまり呼ばれないので覚えていなかった。ここでの啓子との差の付け方も人物造形のひとつか…神がかり的。小説だと名前を呼ばないと描けないことも多いけど、映画では彼女の存在感一つでどこまでも飛び立たせることができるんだ)
本当にぐうの音も出ない黄金比をぶつけてくる増村保造に今回も感服。

「愛するってのはね、すれっからしになることよ」
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