inumuraさんの映画レビュー・感想・評価

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鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽(2022年製作の映画)

1.5

安藤政信のビジュアル(中身はともかく)が太宰治すぎて(上原二郎かはともかく)びっくりするのと、庭で放尿するママのシーンが怖くて良いの以外は全部ダサすぎて特に言うこともないです…太宰作品の映像化はほぼ一>>続きを読む

つげ義春ワールド ゲンセンカン主人(1993年製作の映画)

4.0

この手のことは佐野史郎に任せれば一級に仕上がるね…
当然つげ義春の原作あってこそだけど、ここまで雰囲気ごと自分の映画に変換できる石井輝男ってすごいな。
李さん一家が一番好きけど、やっぱりゲンセンカン主
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市子(2023年製作の映画)

2.5

やっぱり〈自分〉って周りの人たちによって形作られているんだな…と感じたこと以外は、こんなに"いい感じ"なのになぜこんなにも自分の心が動かされない?と不思議に思った。
観客が驚いたり泣いたりする前に映画
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ムーンライト・シャドウ(2021年製作の映画)

3.5

雰囲気映画だと思って観始めたら映画として結構骨太だった。
ファンタジーでかなり余白を残しているし、臼田あさ美の役はすごく便利だけど、知らない人に良いこと言われても響かないよ〜とはなった。さつきと等の間
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妻は告白する(1961年製作の映画)

3.5

当時には面白みがあったのかしら、現代にしてみれば凡庸なプロットで正直何の驚きも発見もなく、増村保造×若尾文子作品としては面白くない方だと思う。
ただ目を引くシーンはいくつかあって、そこに技が光ってる。
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.0

わたし途中で寝てた???ってくらいあっさり終わった…誰の心情も深く推し量れない薄味。薄味だから悪いと言うことはないし薄味には薄味にする理由があるんだろうなともソフィアコッポラだから思えるけども、映画に>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.5

ただそこにある映画だった。これはダメだとかこれは良かったとかこちらの感情を大きく揺さぶることはせずに、そういう日々があったことを知らせてくれた。スター性の強すぎる主演二人が気づいたら市井の人として街に>>続きを読む

ミュジコフィリア(2021年製作の映画)

2.0

心情の深さを推し量る時間も与えられず、表面的な関係だけ提示されて、何も響かないな…と思って観ていたら最後の連弾シーンでやっぱり埋められるわけないはずだった溝に橋をかけられるのは音楽なのかもしれないと気>>続きを読む

暖流(1957年製作の映画)

4.0

セリフが聞こえづらいところもあったけど、それでも話の流れがわかるって良い映画の証拠。
品ばかりある頼りない母、しっかりした娘、ちゃらんぽらんの兄…なんだか太宰の斜陽みたいだ。戦後はきっとこの組み合わせ
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愛なのに(2021年製作の映画)

3.0

まだまだ今泉作品の抱えるテーマは私に響くものがない気がする。5年後くらいに観た方が良さそう。不倫相手がなんだか憎めないキャラクターだったりとか、一筋縄では行かない人間を描けているのは好ましい。
河合優
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猫は逃げた(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

結末は、やっぱり今まで繰り広げてきたことに対して映画がどういう立場をとるのかの表明でもあって、今泉作品が総じて「元サヤ」である点に何かしらの(何だ)主張を感じる。猫はかすがいだね〜だけではなく。
足が
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トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

4.0

しみじみと出会えて良かった作品…
あとで人にあらすじを聞かせたら「そんな話…」と呆れられたけど、観ている間はそれを全く感じさせない。不自然にゾロゾロ歩く人混みも、夢に現れる息子の姿も、映画みたいに追い
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青春の殺人者(1976年製作の映画)

3.5

太陽を盗む勇気をまだ持ち合わせていない男の話。
前半の家の中で市原悦子がずっと喋ってるシーン圧巻。家の中をぐるぐる歩き回って、電気がついたり消えたり。映像表現としてかっこよすぎることの連続。火事も全部
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

語るということは、あるものをないことにしたり、ないものをあることにしたりすることがある。
わからないことを解明するために、家ではサミュエルの人形が投げ落とされ、裁判所ではCGやミニチュアとして落下する
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CURE キュア(1997年製作の映画)

4.5

何か言おうと感想をあたためている間に何も言うことがなくなってしまった。作品のメッセージはともかく映画を形作る全てに感服。観終わった後からもう一度観たくなっている。
こんな病室あるわけないだろと思いつつ
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クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

1.5

こんなん全然ダメだよー!!!ダメです!!
隣人の恐怖というテーマは満点なのに、(たぶん)原作が登場人物それぞれの持つ物語によって肉付けしていたのを、小道具や登場人物の役割の増減による辻褄合わせ(合って
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止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)

4.0

吉積めぐみの伝記でもなく若松プロの思い出話でもない、一般的な青春の危うさと、それが最悪の結末を迎えることもあるという恐ろしさまで描いていたと思う。
屋上で宴会するシーンも誰か急に飛び降りるんじゃないか
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映画の朝ごはん(2023年製作の映画)

4.0

東出昌大さん一日支配人の日で、上映前に東出さんがポパイにまつわる思い出について語るところからスタート。
それまで2時間極寒の中立ちんぼだったので、完全リラックスモードで鑑賞。
食という最もプライベート
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

不安定な音楽、ときめかずにはいられない衣装、過去か未来かもわからなくなる美術…それだけでもう十分素晴らしいけど、冷静になれば、セリフや小道具、身振りに限らずもっとプロットで見せてくれ!とも思った。
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バービー(2023年製作の映画)

3.5

観終わった時は薄味に感じだけど、よくよく考えたら全部詰まっててびっくりした。よくこんなに全部詰め込めたな…それでいてちゃんとまとまっているのは全て「あなたはあなたであるだけで素晴らしい」ということに通>>続きを読む

ひなぎく(1966年製作の映画)

2.5

正直、わたし「サラダを踏みつけられただけで不機嫌になる」人だからずっとキツかった…!カワイイとか思う隙なかったし「女の子映画の決定版」ってちょっと矮小化したキャッチコピーだよなと思う。
が!今自分のい
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

言うまでもないはずだったものの映画。本当になんの変哲もない愛を信じているなと思ったら、ポスターに「愛を、信じる」とあった。観る前は彼らが愛を信じているのかと思っていたけど、愛を信じているのは私たちだ。>>続きを読む

薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.5

冒頭のシーンに脱帽。肌は大きな砂丘のようだ。
そのあと、クレジットを流しながらバックミラーにピーターの完璧な下睫毛、ゆらゆら泳ぐ眼差し、逃さない。
何かをきっかけにして場面が切り替わったり戻ったりする
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千年女優(2001年製作の映画)

3.5

今敏はいつだって自我の範疇を描いている。「愛する人」を追いかける映画的ロマンスを抽出してサンプリングする。これどうやって終わらせるの?って思わせといて最後の一言だ…
私の夢の中と一緒。私の中には色んな
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

新年1本目!冒頭観て、キャッチコピーである「こんなふうに生きていけたなら」が自然に湧いてでてきた。同じことの繰り返しに見える日常が少しずつズレて、いつもと違う一日になる。一つとして同じ模様を描かない木>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

4.0

「俺はなんのために生まれてきたんや」
ありふれた文字列だけど、今まで聞いたことのないほど悲しく、望みのない響きを持って、いつまでも彼の声が頭から離れない。彼の名前は藤岡敬一。
自警団の前で自分の名前を
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花腐し(2023年製作の映画)

3.0

荒井監督と綾野剛氏の舞台挨拶付き先行上映会にて!荒井監督の新作ということで楽しみにしつつも、あえて予告も見ずに挑みました。

カーテンみたいな土砂降り雨から過去に展開していく現在パート、あまりにもかっ
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ほかげ(2023年製作の映画)

3.5

頭からタイトルバックまで最高の流れ。嘘くさい絡みが大嫌いなので(嘘くささを楽しむときを除く)こういう、のっぴきならない感じが良いです。説明もほどほどに主人公の置かれた状況が飲み込めてしまうスマートさ。>>続きを読む

お早よう(1959年製作の映画)

3.0

「お早よう」から始まる大人たちの〈よけいな〉会話が生み出す妙を、叱られた子供が口をきかなくなったことをきっかけに描く。当時特有と思われる住宅街、全く同じ建物が並んでいるので、それぞれの家庭の違いが際立>>続きを読む

ほつれる(2023年製作の映画)

3.5

ボタンをかけ違えた人間関係の行く先。友だちであればしばらく会わなければまたリセットされるけど、毎日一緒にいる家族ならそうはいかない。なんで別れないの?と思ってしまうけど、こればかりは本人にしかわからな>>続きを読む

水のないプール(1982年製作の映画)

3.5

冒頭のリズムが100点満点で、もう勝てません…となる。水のないプール、コップから溢れる水。女たちを人形のようにする行為に湧くはずの怒りが、朝ごはんを用意したり、掃除や洗濯を全部済ませたりする主人公の生>>続きを読む

青春ジャック止められるか、俺たちを2(2024年製作の映画)

4.0

映画の舞台となったシネマスコーレで観るという4Dどころじゃない臨場感で鑑賞。俳優、監督の舞台挨拶付き。木全支配人にも会える。映画と自分のいる現実のレイヤーがぐちゃぐちゃになる稀有な映画体験をしたもんだ>>続きを読む

夢売るふたり(2012年製作の映画)

2.5

ん〜夫婦が抱える物語と騙される女たちの群像劇を並走させられるのは技術あってのことだし、説明的にならずとも状況を漏れなく表す脚本はやっぱり上手いけど、結局具体的な像を結ばないので、観ごたえがない。「ゆれ>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.0

主人公を女性にすることで、「それは男性だから」っていう結論づけを回避している。だからこれは「男性だから」「女性だから」という議論を展開したいわけではなくて、個人とそれ以外(社会、音楽)をどう分けて考え>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.0

アメリカも政府も頼りになんねぇ!戦争では負けたがゴジラには勝ってやるぞ!という個人レベルの意識が集まることによって「みんなで力を合わせて」ゴジラに立ち向かう姿は下町ロケットのごとくエンタメ作品として多>>続きを読む

赤い天使(1966年製作の映画)

3.0

主人公は誰かの命を救うことが自分の使命だと考えていて自分の周りで人が死ぬことに忌避感を覚えている。その行動には共感できない部分が多く、あまりにも「男性」側の理想像。若尾文子のキャラクターとはどこか噛み>>続きを読む