荒澤龍

PLAN 75の荒澤龍のネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

・日本における少子高齢化の閉塞感の中で誰もが思うことを見事に「PLAN75」というアイディアに落とし込み具体化した作品。

・展開が見通せることや終盤にやや強引な設定は見られるが全体を通して細かい部分がリアルで引き込まれた。
・貧困、病、孤独など高齢者の描き方や高齢者への公務員の事務的な対応、何気ない言葉の暴力、社会の無言の圧力が倍賞千恵子の言葉ではなく表情で語られるのが非常にリアルで印象的である。
・「PLAN75」という一見突飛なアイディアも安楽死を選択した者への謝礼やCMを使っての大衆意識の形成など、現実にもありそうと思わせることで違和感なく観られる。

・また安楽死を素直に受け入れられる友人や高齢者の死に対して病気の子供を救いたい人を登場させるなど対比や葛藤の表現も上手い。
・「PLAN75」を推進する側も、はじめは事務的なやり取りに終始しているが、親族の登場や利用者との対面を通して高齢者の生活や背景に触れることで葛藤するのが、まさに現在の安楽死を巡る倫理的な問題にも触れており素晴らしいと感じた。

・ただもし現実にこういうことが施行されたらという視点で観ると、「死に近すぎる仕事はAIによる自動化が選択されるだろうな」とか「死ぬ日が決まっている人間は何をするかわからないからもっと監視が必要」とか色々考えてしまった。

・立場や考え方によって賛否両論で議論の余地が残されているのがまさに映画の良いところであると思った。
荒澤龍

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