ゆみ

TAR/ターのゆみのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

長いですが、補助線になるようなレビューではなく、個人的なメモです。

主人公に共感できるか、主人公を好きになれるかが、いい映画の基準ではないなと実感した。
前情報なしに見始めたので、かっこいい「女性」像を見られるのかと思っていたら、序盤からセクハラ・パワハラが続いて不穏な気持ちに。こういう人は好きじゃないけど、女性が「仕事はできるけど人間性がだめ」な主人公を務めるというのは新しいかも!というのが前半の感想(リディアの性自認は女性ではないので適当な表現ではないのだけど)。
後半はますます不穏になっていくのだけど、リディアがあまりに潔く壊れていくので、その振り切った演技と演出にどんどん気持ちよくなってくる。
私はホラーやサスペンスが苦手なのだけど、映画の怖さや不快さってこうやって楽しむものなのか、と初めて体感したかもしれない。
エンドロールの短さと、そのために(もはやどちらが最初の目的かわからないけど)もってきた冒頭のあの時間の使い方がとてもいい。丁寧に長くみせるところと、数十秒で切り替わって物語が進むところの、緩急の差がじょうず。言葉ではないものの使い方が巧み。そうそう、中で語られている言葉がしばしば映画全体を説明しているのだけど、その枠構造の見せ方もほどよい。
凄いものを観た。
ゆみ

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