波野なみ松

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの波野なみ松のレビュー・感想・評価

2.3
ミシェル・ヨー姐さん主演でアカデミー賞受賞作とあって、見るのを楽しみにしていた映画。突飛なことをすると別の宇宙へジャンプできるから、みんなとんでもなくバカバカしいことをしでかすのが愉しい。
ウエストポーチをヌンチャク風にして戦うシーンが一番好き。カンフー映画の見どころは、①弱そうに見えた奴が実は強い、②日用品をうまく武器として使う、という2点に限ると思っているので、この映画にはその良さが満載されていて見応えがあった。
でも…、中年おばさんが人生の分岐点からマルチバースを旅するなら、納得いかないところが多かったし、エンタメ要素だけの浅はかなお話に感じられたな。
同じ中年おばさんとして物足りなかったことの一つは、エブリンの母親が出てこなかったこと。母娘の葛藤を描くなら、エブリンが娘時代に母親とどんな葛藤があったかが不可欠だと思う。子育てをしていて思うのは、母が自分をどう育てたか。リスペクトして同じようにしようと思うこともあるし、同じようになっちゃダメだと思う点もある。女性にとって、自分の母親が一番のロールモデルだから。それなのに、この映画には父親しか出てこないって、なぜだろう?
それから、女性が一番マルチバースを考えるときって、子供を産む前だと思うんだよね。生まれてくる子が男の子だったら?双子だったら?何らかの障害があったら?死産だったら?第二子第三子と産んでジョイに兄弟がいたら?そもそも子供を産む選択をしなかったら?
私は今でも、うちの息子が女の子だったら、とか、もし第二子を産んでたら、とか、子供を持たない人生だったら、って、いっぱい考えるけどね。
パートナーも夫一択なのもありえない。結婚するしないではなく、別の人と幸せになる人生を考えるのが一般的。あの人と結婚していたらどうなっただろう?もしもあのときフラレなかったら?なんて、誰でも選択肢の一人や二人いそうだけどね。
カンフーの達人や歌手でなくても、エブリンの会計処理や情報処理能力がもうちょい高かったら?コインランドリーが大当たりして大会社に成長していたら?そもそも違う業種で起業していたら?
現実的なマルチバースすぎて映画として面白くないかもしれないけど、「普通のおばさんエブリン」とうたう割に一般的じゃない気がして、彼女がつまらなかった。
同じおばさんでは、久々にジェイミー・リー・カーティスを見られたのが良かった。最初気が付かなったから、うれしい驚き。
波野なみ松

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