佐藤哲雄

RRRの佐藤哲雄のレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
5.0
RRR

観てしまったよ。
想定はしていたのだが、やはりやられたよ。

S.S.ラージャマウリ監督の作品と初めて出会ったのは、2013年に『マッキー』を観た時だったよ。

当時、私は衝撃的な印象を受け、実に興味深い映画を作る御人だな、と感じた。

彼はまだ49歳とのこと。
彼の作品は、いずれも非常に人間性に溢れており、彼自身の人間性を映画という形で表現しているようにさえ思うのだが、それにしても、実に奥深い作品を軽快なリズムと愉快な演出で作り上げる才能に関しては、私は畏敬の念さえ抱いているよ。

そして、本作だ。

本作は絶対にネタバレをするわけにはゆかないため、どうレビューをすれば良いか悩むが、ともかく、やってみようかね。


「構え! 狙え! 撃て!」

幾度も発せられるこの言葉に込められた、恐ろしいほどの信念と執念と祖国愛。

そして、最後には、この言葉が、命を賭した友情にまで広がる。

ロングランを続けていた理由を嫌と言うほど理解させられる作品だったよ。


そして、亡きレイスティーブンソンが宿敵ヴィラン役を好演していたことに驚かされたよ。

彼は屈託の無いキャラクターを演じることが多かったが、ここまで悪に染まった役を引き受けたことに更なる驚きを禁じ得ない。

弾丸のコストと人間の命の比較。
非常に本質的な不都合な真実を巧く表現していたな。

そして、エキストラの数の多いこと。
いったい何千人のエキストラを集めたのだろうかね。

昔、私が若い頃に『天と地と』という角川映画で6万人のエキストラを使って合戦シーンが撮影されたことが話題になっていたことがあるが、あの映画はエキストラの使い方が酷く、映画自体も酷い有り様だった。

だが、本作のエキストラの使い方は実に巧みで、支配者対国民、という構図を実に見事に表現していたよ。

お見事としか言いようがないな。

それから、この監督の作品は『バーフバリ』シリーズでもそうだったが、実写とCGとの区別が全くつかないほど緻密でシームレスな融合を実現していることにも驚かされるよ。

否、CGの使い方が実に見事で、使う場面と表現法は、監督の感性とこだわりから生まれたものなのか、それとも、制作スタッフにそのような見事な才能を持つどなたかがおられるのか、ともかく、素晴らしい映像と音声の融合体に仕上がっていたよ。

オオカミやトラとのチェイスシーンも、もはや本物のオオカミやトラに追われているようにしか見えなかった。

同じく、人を殴り殺す場面などに関しても、本当に殴り殺しているようにしか見えず、リアリティがあり過ぎて、観ている私が自律神経レベルで条件反射的に叫んでしまうほどだったよ。

アクロバティックなシーンの演出もお見事のひと言に尽きるよ。

どんな脳構造をしていると、このようなシーンを思い付くのであろうか、と不思議でならないが、ある種の天才的な『イッちゃってる』演出に何故か不快感を覚えない不可思議さがあるよ。

まるで、かつて繰り返し観ていたジャッキー・チェン主演の映画シリーズに酷似しており、鑑賞者の潜在意識が求めている『満たされない何か』を連鎖的に提供することにより、ある種の陶酔感にも似た快感を覚えるほど、巧みで見事な構成になっている。

そして、脚本と筋書きの見事さ。

バーフバリシリーズでもそうだったが、終盤で見せられる驚くべき事実の発覚により、それまでの積もるほどの伏線が怒涛の如く回収されてゆく様は、戦慄するほどリズミカルでありスピーディであり、極めて緻密な計算の上に成立している物語であることに気付かされる快感を見る者に与えてくれる。

また、本作では、エンドロールでのインド映画的主張にも力が入っていたよ。

よくしゃべったな……

感動冷めやらぬうちにレビューを書くから、このようなことになる。

数日置いてレビューをしたほうが良いのかも知れないが、それさえ待てないほど、レビューを書き殴りたくなる麻薬のような映画だった。

そして、この監督の初期の頃の映画観たさに、さきほどJAIHOを契約してしまったよ。

全部あったよ。
彼の作品群が。

以上、天晴れな映画だったよ。

笑いと感動と気付きと活力をありがとう。
佐藤哲雄

佐藤哲雄