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クイーンズ・ギャンビットのmoridonのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.8
『マッドマックス』のスピンオフでフュリオサを演じることとなったアニャ・テイラー=ジョイの魅力が爆発。今年ベスト級のドラマでした。

アルコールとドラッグに溺れる天才という現代的な題材もさることながら、60年代の美術や衣装のクオリティーがめちゃくちゃ高い。60年代の楽曲もバシバシキマってる。

“クイーンズ・ギャンビット”とはチェスのオープニングの一つで、まずポーンを犠牲にしながら進めていき、その後追い上げていくような手法。つまり孤児院育ちの主人公が全てを失ったドン底の人生からどうギャンビットしていくのか、という作品。

チェスの世界は男性社会。その中で彼女が強敵たちを蹴散らしながらのし上がっていく展開は女性のサバイブを描いているという点で素晴らしいが、それを抜きにしてもシンプルに面白い。痛快とはまさにこのこと。二人が盤面を挟んでただ駒を打ち合うだけのチェス、それをこんなにも映画的に魅せている撮影と編集がすごい。

そしてドラッグによって頭が冴えて決めの一手を思い付くという設定もこの作品の肝だと思う。若いラッパーなどがオーバードーズで命を落とすということが多々ある中で、ドラッグの危険さを理解してはいても彼らの音楽とドラッグは切り離せないものであるのも事実。「ドラッグはクリエイティビティの要因になり得るのか」というのは長年議論されてきたテーマです。

この問いへの答えは一つではないと思っています。そして、この作品はその数ある答えの中の一つを最後に提示してくれていて、最終話の彼女の堂々たる姿は男性女性関係なく一人の人間として最高にカッコ良かった。もちろんこの答えが絶対に正しいわけではないが、彼女の姿に勇気づけられる人はきっとたくさんいる。

アニャ・テイラー=ジョイのフュリオサが楽しみでしょうがない。
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