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東京ラブストーリーのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

東京ラブストーリー(1991年製作のドラマ)
4.5
「バブルの時代と泡沫の恋」の考察

当時あんなに流行っていたのに観ていなかったのは、カンチとリカのように遅くまで働き、仕事の後も毎晩同僚や上司たち、顧客と飲み歩き、土日も半日は自主的に働いていたから。飲んだ後にオフィスへ戻って仕事することもあった。ドラマを観る余裕はなく、働きづくめで公私の時間の区切りはなかった。だから自然と社内恋愛や社内結婚が多くなる。ドラマのようにオフィス内がすべてだった。

念願の初『東京ラブストーリー』

前情報なく観てびっくり仰天。
大失恋した自分のシチュエーションとそっくりで、放送時期と進行時期が完全に一致しライブ感ありすぎ。

鈍感で優柔不断なカンチがあいつに、健気なリカが自分にみえた。仕事でよくケンカし、お詫びにとオフィス内で遠くの席から大声で食事に誘われ公然の仲になったのに。私に海外勤務の話が出ていて、ちょっともめていた後に2Wの出張から帰国したら~~~突然、高校の同級生と婚約したと言われ…こんなドラマチックな失恋まるでドラマと思ってた。月9とリアルライブ同時進行だったんだ。

「おでん」じゃなくて、決め手は自家製のティラミスだった(と後でカンチに言われた)。もちろんリカは会社辞めましたよ。今気づいた。刺客サトミは月9観ていた疑惑!ちょっと鳥肌。サトミ怖い…全国に抜け駆けサトミが増殖していたのかもしれない。

再放送も見なかったのは、似ていると自分でもうすうす気づいていたからなのかも。

記憶の奥の奥に封印し、その上にうん十年分の重石をして化石にして安心していたのに。よみがえる魔のあの日。リカと一緒に涙で洗って、もう一度葬りましたよ。

ドラマより現実の方がドラマチックだと思うわ。
でも、キーワード「海外赴任」<<<「高校の同級生」+「家庭料理」の破壊力。それは時代が求めたことで、どこにでもあるドラマだったのかも。

バブル弾ける寸前のピークは、毎晩宴会で、やたら未来志向で、やたらダイナミックで、やたら先が見えなくて、自由で不安定で、妙にハイでカオスで、みんな仕事疲れしていて、ふと馴染みある家庭的なことに誘われたら、ふらふら行っちゃうよね。

バブルの時代の特性がリカのキャラクターに被せられている。

大きな物語に巻き込まれ、疲れた人びとを個人レベルの自分の物語に戻そうとしたのがサトミなんじゃないかな。

リカがカンチに「料理できるんだ」と驚かれていて、同僚は働く同士であり、ライバルでもあった。バブルは人手が足りなかったから、女性を登用し、女性が活躍する土台を作った時代でもある。女性の台頭は男性のポジションも脅かしたから、海外勤務する女性への嫉妬と焦燥感は口にはしないけどめちゃめちゃあったはず(と今冷静に思った)。

小さい男だと言っているわけじゃない。働く同士、闘う企業戦士、だから互いに切磋琢磨し「ガンバレ」であり、互いに「安らぎを与える」相手ではなかった。

カンチはリカに海外行くなよとは言えない構図。リカは行くなよなんて言われたかったわけじゃない。心をつなぎ止める確かな形が欲しかっただけ。それに気づけない鈍感カンチ。自分からは決めないカンチ。責任とりたくないカンチ。断られるのが怖いカンチ。傷つきたくないカンチ。それじゃ仕事もダメね。リカに引け目を感じるカンチ。カンチの成長が遅すぎる。


過去を捨て続け未来に生きるリカ。
過去を捨て未来に生きることを決めた長崎さんと三上。
過去に生きるカンチ。
過去のカンチは未来のリカにいつまでたっても追いつけない。待ち合わせのすれ違いは全部そう。携帯がなくても。LINEがなくても。
頭の回転が速く先回りして考えるリカ。カンチが考えるのはせいぜい「今」。
カンチとサトミにとって二人は未来をどう考えていたんだろう。

初めての『東京ラブストーリー』、かつての自分の物語に思えて泣きながら観ていたけど、レビュー書いて整理できてよかった~😊


教訓
高校は共学だったらよかったなあ。
生まれ変わっても最強のサトミにはなりたくないな。

長文失礼いたしました。
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