mimitakoyaki

今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.6
精神科病棟で日夜働く看護師、医師達や精神疾患を抱えた患者達の心を丁寧に紡いだドラマです。
新作ですが全話配信されていて、面白くて一気に見ました。

このドラマを見ると、何かのきっかけで誰にでも心を病む可能性はあるし、疾患とまではいかなくても、このストレス過多な生きづらい社会では、多かれ少なかれ心が追い詰められて疲弊して潰れそうになったりする事もあるわけで、その境界の曖昧さを感じました。

パニック障害や双極性障害(躁鬱)、妄想、幻覚、鬱など、その病気の人がどんな感覚を持つのかをCGを使って描いているのでイメージしやすかったし、その人がそうなった過程を知ると、仕事や毒親や学校、家族の無理解などで自尊心を傷つけられて辛い思いをしたり、或いは自殺サバイバー(自殺者の家族など)のように心に深く傷を負い、自分への否定感情や罪悪感、絶望に苛まれてしまって、本当に辛く苦しい思いをした人なんだということがわかります。

でも、世間ではまだまだ心の病に対する無知から来る偏見も強く、精神疾患を抱えた人が社会の中で生きていく困難さがすごくあって、そんな事もしっかりと描かれています。

重く辛いエピソードもありますが、そうしたところからも、理解し寄り添ってくれる人の存在を支えに、ゆっくりと傷ついた心を回復させ、自分を取り戻していく人たちの立ち直りも優しくあたたかな視点で描かれているので、何度も胸に込み上げてきて涙が出てきました。
そして、毒親に対するひとつの見解は、わたしはとても良かったと思いました。
特に韓国は親を敬うという儒教思想が根強くあるので、あのようにキッパリと示された事がとても新鮮に感じました。
自分の心を大切に生きる、その事をちゃんと伝えていたのが良かったです。

同じく病院が舞台の「賢い医師生活」なんかも神ドラマで医師達がとても魅力的ですが、このドラマの方が、看護師や医師も一人の人間としてリアルというか、全然完璧じゃないんですね。
家族のこと、仕事と子育ての両立のことなど、それぞれに悩みや困難を抱えていて、そのしんどさや葛藤は、自分自身も似たような経験をしてるからすごく共感しました。

それから、同僚の看護師仲間の素敵なこと!
医師達も、最初は癖あるなと思って見てたのですが、患者さんへの接し方や症状に適した精神療法なんかはすごく勉強になるしで、自分を認める事ってほんとに大事なんだなと思いました。
あと、ファンヨハン先生!
はじめしつこい男やとか思ってしまってゴメン!
めちゃくちゃ良い人!
人に寄り添うってこういう事だなと思わせてくれました。

肛門科のトンゴユン先生を演じたヨンウジンは、「39歳」の時はピンと来なかったですが、本作ではちょっと変わってて、でも茶目っ気もあり優しくて、とても魅力的でした。

主人公ナースのダウンを演じたパクボヨンも良かったですし、ダウンの友人ユチャン役のチャンドンユンも、明るく屈託ない気楽な親友感が、こんな友達いたらいいなってすごく思えて、「ノクドゥ伝」では美しい女装を見せてましたが、また全然違った魅力がありました。

主任看護師のイサンヒの実在感もすごい。
表情、話し方、何もかもすごくリアルで、演技感がないんですよね。
パクボヨンなんかは可愛くて華があるけど、イサンヒはスッピンぽくて、ほんとにこんな人職場にいてそうっていう感じがありました。

コンミンジョンやユインスが登場するエピソード有り!
チョンベス、イジョンウンなども脇を固める役者さんも素晴らしく、病院を舞台にしたヒューマンドラマの傑作だと思いました。
精神科病棟が、明るい陽が差し込むあたたかな色合いだったのもとても印象的で、精神科のイメージが変わりました。

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