空

弁論をはじめます。の空のレビュー・感想・評価

弁論をはじめます。(2022年製作のドラマ)
3.6
『弁論』というタイトルの割に法廷シーンは殆どなく、あっても法律論の掘り下げが浅くメインはサスペンス。
サスペンスパートも韓国お決まりの復讐劇、権力者の不法行為と隠蔽、善と悪の単純で分かりやすい構図で複雑ではないけど真新しさはない。

けれどここのコメントにも多数ある通り主演の2人が物凄くよかった!!
さすがアラフォー実力派俳優、少しずつ心を開いていく過程、恋愛に進みそうで進まない絶妙な関係性、夫婦漫才のようなコメディシーンなど、2人のシーンは例外なく全部良かった。

ギャーギャーうるさいわけでもなく、かといって安易に恋愛に発展するわけでもなく、イ・ギュヒョン繋がりで『秘密の森』を想起させるシーンがあったりして、秘密の森コンビも良かったけど、あの2人とはまた違った人間味溢れる2人だった。

イギュヒョンはやっぱりすごい俳優だなと改めて思ったし、ウォン・ヒョンジュン演じたノ・チャッキ弁護士は今まで見た韓ドラヒロインのなかで一番好き。
40代女性が主人公のドラマ自体少ない上にクールさと人間味が絶妙なバランス。この女優さんだからこそ生まれたキャラクター。
心を開いている人物に対する表情とそうでない時が全く違う。真っ直ぐ相手の目を見て表情一つ変えずセリフを発する演技は何となくアジア人ぽくなくてアメリカのリーガルドラマの主人公みたいだなと思ったら、オーストラリア育ちの女優さんなんだね。
このクールな演技がカッコよくてもっと見ていたかった。チャッキの人間的成長がちょっと早過ぎたかな。

あとクセのある方言で淡々と被疑者を追い詰める女刑事の存在感。武闘派で感情的な男刑事の部下と対照的な現代の刑事として描かれていて、実は誰よりも冷静で論理的だったのはこの人。
少し前は完全メイクにパンツスーツの美人刑事ばかりだったけど、スッピンで気取らない、Tシャツにジーンズ姿の男性部下率いる女性刑事チーム長って現代ぽくていい。

一つ残念だったのが、明らかに心神耗弱で殺人の間接正犯に道具として利用されたに過ぎない人物が極刑になったこと。
確かに過去にやったことは決して許されないことだけど、本件とは別。他の法廷シーンでも感じだけど、リーガルドラマで感情論で結論づけるのはダメでしょ。作家さんもう少し法律勉強して欲しかった。
これがデビュー作らしいので今後に期待♪
空