mimitakoyaki

スノードロップのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

スノードロップ(2021年製作のドラマ)
4.1
韓国で本作への強い批判があったことも薄っすら聞いた事があったし、なんか重そうな感じもするしで、なかなか手が出せなかったのですが、とても面白かったです。
でも1話が毎回1時間半あるのはさすがに長過ぎます…。
しかも、ほとんどが女子大の学生寮でのシーンなので、それなりに展開があるとは言え、よくこんな長い話を持たせられたなと感心します。
「新感染」でもほぼ新幹線内での話なのにスリリングで飽きなかったけど、やっぱりストーリーがよく練られてるし、キャストが強いんですよね。
まあでもやっぱり長いもんは長い!

ある日女子寮に大怪我を負った若い男(イケメン)が逃げ込んできて、それはこの前合コンで出会ったイイ感じの人でした。
反政府の学生運動で泣く子も黙る国家安全企画部(今で言う国家情報院)から追われて来たのだろうと、ヨンロが同部屋の学生達とともにイケメンを匿って世話してやってたら、実は彼は北朝鮮のスパイで、その後、学生達を人質にしての女子寮立てこもり事件へと発展してしまいます。

安企部から狙われるだけでなく、同胞のスパイ同士での確執や、裏切り、密告や様々な駆け引きがあり、とてもスリリングです。
お互い思い合ってはいるものの、かたや北朝鮮のスパイで、もう一方は…秘密もあり、あまりにも障壁が高過ぎて絶対に叶わぬ恋。
それがとても切ないし、それでも愛する人を命懸けで守ろうとするヨンロとスホから目が離せませんでした。

本作の舞台は1987年で、まさしく映画「1987」で描かれていた、ソウルオリンピックの前年、五輪を機に国際的にデビューしようとする軍事政権と、民主化を求める市民との間で激しくぶつかり合い、内戦さながらに市民から多数の犠牲者が出るなど、揺れに揺れた時代です。

オリンピックを目前に控え、民主化が宣言され、初の国民の投票による大統領選挙が行われる、その直前の歴史的にも激動の時期を描いたドラマです。

また、映画「工作 黒金星と呼ばれた男」で、実は韓国の政権と北朝鮮のトップが秘密裏に繋がっており、大統領選挙が近づくと、独裁政権を維持したいために、北朝鮮にお金を渡してわざとけしかけてもらい、反共ナショナリズムを高めるという裏取引をして互いに協力し合っていたという歴史の事実が描かれていましたが、この作品でも、大統領選を前に、与党が有利になるようにと北朝鮮とつるんで選挙工作をするというのが描かれていて、大統領に近い安企部や与党の幹部などが、それぞれの地位を高めようと画策し、権力争いに躍起になってるのがまあ醜悪です。
なにせ、それを演じるのがホジュノとパクソンウンですからね、すごいんです。

金と地位と権力のためなら、何の罪もない人質の学生の命なんてどうでも良く、一体誰のための国家なのかというのを考えさせられます。
これまで韓国映画をいろいろ見て来たおかげで、この時代の背景や歴史的な流れなども知ってたので、このドラマもとても面白く見れましたが、その辺のことがわからないと、敵である北朝鮮との密約なんて現実離れしてると荒唐無稽に感じることもあるかもしれませんね。

スホとヨンロの禁断の恋の行方だけでなく、敵対する者同士のコンゲーム、内部に潜む裏切り者、スパイと人質、スパイと安企部チーム長との関係の変化など、スリリングであり、笑いどころもあり、最後は涙涙だったりと、めちゃくちゃ長いけど見るだけの価値がありました。

スホ役のチョンヘインが細いんだけどガッチリしててカッコイイ!
シルエットで映った時なんて、小顔だからかスラッとしたスタイルの良さが際立っていて、スパイだとしても好きになってしまうのは仕方ないと思わせるだけの説得力があります。
「D.P.」でもそうでしたが、シリアスなシーンが多いので、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」などのような穏やかで可愛らしい感じはありませんが、それだけに最初の方の名門大学生を装ってる時の感じは貴重です。

「SKYキャッスル」の監督だということで、SKY…のキャストがたくさん出ていて、中でもケブノク役のキムへユンはめちゃくちゃムカつくんですけど、それだけ憎まれ役が巧いんですよね。
寮長役のユンセアなんて、SKY…の時とは全く印象が違ってて驚きました。

「社内お見合い」で大ブレイクしたキムミンギュもまた全然違う役柄で、北朝鮮のスパイなのでイモっぽさを演じていました。(チョンヘインだけはなぜかカッコイイ)
安企部チーム長役のチャンスンジョも、立てこもり事件でずっと寮から出られず、髪はクシャクシャで服もずっと同じなんですけど、ほんとかっこよかったです。
最終回のスホと交わした一言には思わず涙が…。
チーム長でありながらも、自らの組織の欺瞞を知り、そこと闘っていくのが胸熱でした。

いや、身近にそんなようけ工作員おらんやろ、いくらなんでも…知らんけど。
とか、いや、そこ!見つめ合ってる場合やない!早よ逃げい!
とか、いや、スホいとも簡単にそこに戻れたな!
とか、まあツッコミどころもありますけどね。
それにしてもですよ、韓国人は祈祷がほんとに好きだなとあらためて思ったのでした。

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