ススピヨ

離婚しようよのススピヨのレビュー・感想・評価

離婚しようよ(2023年製作のドラマ)
4.1
あのむず痒いくらいのギャグテンポが全然ない。ほぼ会話劇でしかも男も女も人間への解像度がすごく高い。脚本は半分こなのか。
なんかキャスティング被ってんなと思ったら宮藤官九郎じゃん、とたどり着くくらい。スッキリした演出。そしてめちゃくちゃおもしろい。


錦戸を次世代のオダギリジョーにしようとしてる?くらいずるい男に仕上げてきた。
どうみたっていい男。条件なんかじゃなく、あの生き方をしてきて「きみだって俺といる時はただの女でいろよ」と言える。ここが絶対に大事なんだよ。まだ2話だけどー

と思ったら4話?ゆいを守ってはくれない。
こういう謎アーティストが言う「作業」というフワッとした理由・これだけで見てるわたしの信頼を揺らげたーー
実際パチプロだけで食ってるのか、その謎の制作はなんなのか、そこが大事だけどな


全編通して罵倒の勢いが気持ちいい。
不適切の時も思った。

峰子さんが勢いでパチンコ打つとこめちゃくちゃ良かった〜
お家のためにわけわからん男に話つけに行って、そのためならパチンコ打つんだぜ〜
覚悟が違う、カッコいい。

不能だから人よりたくさん考えるんだな、と素直に思える大志は、やっぱり恭二に無いものを持っている。ここの対比が、なんというかヒネた人間にはグッときました。

政治家への嫌みがちょくちょく混じるのも、庶民としては見ていて面白いです。まあまあチクッとするよね。この嫌味を受け止めるのが七光りおとぼけ大志という構図がなんとも上手い。



作中、ゆいに向けられた「育ちの悪さ」という言葉が時折差し込まれる。この時世に使うのは中々チャレンジャーだな。ここから不適切への系譜を感じる。
女優として大成し、東海林家のお坊ちゃんと恋をして、代議士の嫁を頑張る巫女ちゃん。
離婚を決めていようと外の男に惚れていようと、議員になる前の大志はすてきだったと言える。大志は当選しなきゃ生きてる意味がないという姑に、そんなことないって言える。
産むも産まないも母たる己の自由であり、子供はオブジェじゃないと言い切る。恭二の俺の子供だ発言にもしっかりなんかムカついている。
育ちの悪さが顎に出ていようと、はっきり怒れるゆいは魅力的な女だと思う。
育ちがどうとかそんなことは吹き飛ばすのだ。それでもいい女じゃん、それじゃだめかね?
っていうかこのドラマはものすごく女達が良い。
3話の冒頭、峰子さんの前で男がいるいないの話でブチ切れる仲里依紗の演技は間違いなく一級品。超面白かったこのシーン。


7話、「普通の人はこんなオブジェなんか作らないよ」って台詞で全てわかった気がする。普通の男であったな恭二。浮世離れもしてなかったし夢を見させてくれない恭二。
幻滅しかけた後の結婚会見。
顔にスマホを落とすことまで覚えた恭二は普通の人間だったから汚そうで人間ぽくて好きになった。変わったのはゆいだよとか言う男だったんだ。
でも言語化する奴が最低なんだ。いいじゃん。

9話。捨て台詞と共にスナックから出てきた峰子さんは鞄をヤンキー担ぎ。面白さは大切だけど、人間が怒ってる時はすべからく品性を捨てるもんかしら。
知らない世界のいじけ方をそう簡単にするもんかしら。お義母さまのお育ちは知らないけど、わたしってこういう視点潔癖なのかしら。

登場人物の言動に一貫性がないとレビューしてる人がいて、ちょっと引っかかる。
こういう気持ちになることない?
さっきまでにこにこしてたって、怒るとこで怒っていればそのふたつで人間性の判断基準になる。
最後のセリフはそういうことだとも思います。
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