ユーライ

平家物語のユーライのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.7
古典を引用して事件を経た心境を吐露した私小説的作品。無教養なので先を知らないまま楽しめたが、後半になってどんどん濃厚になる死の臭気が凄い。これまでは日常の些細な、どうでもいいと言えばどうでもいいミクロな問題を繊細に綴ってきたのだろうが、一気にスケールを拡大し過ぎである。それでいていい意味での緩さは残っており、この血生臭い題材に対する距離感は、かつて三国志を笠原和夫でやっていたようなしかめっ面具合と比較すると本当にオリジナリティだと思う。死体や血を直接映さないのもあるが、ちょっと異様な軽さ。それでいて重くないわけではない。重要な要素である百合はそう、びわと徳子だね。不老と子持ち。実質的な主人公は徳子だ。戦場で勇ましい男どもに対するしなやかな女の強さ、というアプローチも現代的でもなんでもなく百万回は繰り返されてきたが、それらに比べてこれも押し付けがましくない。「祈るしかない」という帰結の凄みが画面の圧で主張してこない。パブリックに見えて個人的な問題(鎮魂)なのは富野なのかもしんない。
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