アー君

ジョジョの奇妙な冒険のアー君のレビュー・感想・評価

ジョジョの奇妙な冒険(2012年製作のアニメ)
3.6
過去にも第三部(アニメでいうところのシーズン2)オリジナルビデオ化に試みていたが、レンタルして視聴した限りなんとなくピンとは来なかった。

「二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。 一人は泥を見た。一人は星を見た。」

単行本の扉にフレデリック=ラングブリッジの「不滅の詩」が引用されていたけど、

今回もナレーターがこの台詞を話していたが、マンガとして抱いていたイメージが少しずれてしまった感じ。

当時は星を見たのがジョナサン(ジョジョ)で、泥を見たのがDIOというのが定番であるが、DIOこそ反省を学んで生きることに執着した人物であり、仮に泥を見たとしても水面に星が映っていたのかと思うけど。

あと話数として仕方がないのだろうけど、ジョナサンとジョセフ(孫)をシーズン1にまとめるのは如何なものかと思います。(世代的なギャップもあるけど)

ジョナサンの話に戻るけど、置いてあった石仮面がやがて意味のある重要なアイテムにならなければならない。

これは前にも述べたが「チェーホフの銃」という小説や劇作のテクニックであるが、荒木氏の作風は特異な世界を描いているようで、少年漫画にこの技法を使っていたのは基礎を学んでいる証拠である。

ジョジョが連載当時は(1987年冬ぐらいかな)DIOとジョナサンとの関係を序盤から楽しみにしていて、初版の第1巻を買った時は皆から笑われて誹謗・中傷までは言わないが、もうすぐに連載が終わると言われて変人扱いだった。

連載時に見た「魔少年ビーティ」(イニシャルのB.Tは寺沢武一からの説が高い)の真正面による脇役である麦刈公一の話からの登場によるコマ割りは大胆で衝撃だった。現在の活躍からすれば、後出しジャンケンとして揶揄は受けることを承知で、やがて成功して世に出るだろうと確信をしていた。

「武装ポーカー」は、だいぶ後になって読んだ読み切りのデビュー作であるが、確かに伏線の張り方が見事に構築されており、三者三様による思惑から読者の錯覚による技術は当時から秀逸であり、手塚治虫が激奨した理由も分かる。

その後の「バオー来訪者」、フレッシュジャンプの「ゴージャス・アイリン」が発表したり、マイナーな短編だけが掲載される時代もあったが、なかなか読者の心を掴めず泣かず飛ばずだったのは認めるけど、子どもながらに他の作家にはない言葉にはできない何かを秘めていた。

本編に戻るが、シーズン1の後半(漫画だと二部)は、ジョナサンの孫であるジョセフが主人公となったが、孫が引き継ぐというのは当時としては大胆だったと思う。性格もジョナサンとは違うタイプだったが主人公としてのカリスマ性は際立っていた。

石仮面のルーツと柱の男たちとの戦い、ナチスを悪としてみない哲学的なテーマも盛り込んでいて、ただ殴り合って特殊な力を使うわけではない、心理戦も絡んでいたのがこのマンガの魅力であり、同時期に連載をしていたトーナメント制度と強さのインフレ化には辟易(へきえき)していたので、毎週楽しみな漫画であった。

[2013年4月6日:MXテレビ]
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