カトゥさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

カトゥ

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レッドタートル ある島の物語(2016年製作の映画)

4.9

とても心地よい作品でした。

典型的な異種婚姻-常世-ニライカナイ譚として、環太平洋・アジア文化圏の住人として親しみやすい話だと思います。平たくいえば浦島太郎などの類型。でもこれ、西洋の人達にはどう映
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映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.6

原作漫画の存在は知っていて、何度か薦められたこともある。が、今さら単行本を買い揃えて通し読みするというのもなあ、と思っていた矢先に劇場映画の公開。しばらく疎遠だった友人母娘に誘われて、という珍しいきっ>>続きを読む

千年女優(2001年製作の映画)

4.5

映画への愛をここまで大っぴらに語る作品も珍しいと思う。
難解ではないけれど、ただ物語を追っていくだけだと肩すかしを食らうかもしれない。それは「パプリカ」等と似ている。恋愛映画の体をした、これは私小説み
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FAKE(2016年製作の映画)

4.8

否応なく、タイトルの意味を考えてしまう作品。虚を作り出すのは人間の性であり業でありそして魅力でもあるのだが、こうして正面から突きつけられる機会は少ない。そういう意味でも良い映画だったし、観ないとわから>>続きを読む

シング・ストリート 未来へのうた(2016年製作の映画)

5.0

すごく良かった!映画館で2回観たし、それが勿体ないとは微塵も思っていない。

僕はもう、主人公達を「かわいいかわいい」としか思えない。クソみたいな街から出ていきたい、誰かの気を惹くためだけにバンドを初
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マリー・アントワネット(2006年製作の映画)

4.0

かなり徹底して「現代寄り」にしたマリーアントワネット。たぶん数年経ったら、古臭く感じるのではないか。例えば数年前のファッション誌を読み返しているみたいに。あーロハス流行ってたねー、とか、カラフルなマカ>>続きを読む

君の名は。(2016年製作の映画)

5.0

「夢だけど、夢じゃなかった!」「けど夢だった!」
なんて台詞は無いけれど、まあ夢と現の物語ではある。
新海誠監督の作品は、彼が1人で活動していた時から大好きで、でもあまり大っぴらにはできないというか、
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プライベート・ライアン(1998年製作の映画)

4.0

凄惨な前半の数十分は、本当に驚いた。ノルマンディー上陸作戦といえば、今でもあの映像が頭に浮かぶ。まず激戦を容赦なく描いたことが、その後のごく小規模な、そしてアメリカ的な“作戦(タイトルにある一兵卒の救>>続きを読む

レジェンド 狂気の美学(2015年製作の映画)

4.4

かつて実在したギャングの兄弟をトム・ハーディの一人二役で描いた作品。
でも言われないと一人の役者さんが演じているとは気付かないかも。それくらいに二人は違う。

ギャング映画ということで、かなり凄惨で容
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小さいおうち(2013年製作の映画)

4.5

原作が好きで、映画も存分に楽しんだ。

何層にも真実が隠され、しかしそれを謎解きではなく雰囲気作りに活かしていて、斬新というか独特の物語になっている。

昭和モダンから戦時下への、ある家族とその女中さ
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バベットの晩餐会(1987年製作の映画)

4.7

名作であることは知っていた。
大雑把な粗筋も把握していて、劇中で供されるご馳走のいくつかさえ本で読んだことがある。映画と食について書かれた本では必ず登場する作品だが、なんとなく見損ねていた。そういう名
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レオン(1994年製作の映画)

4.5

公開当時、意見が合わない友人のお気に入りだったこともあって、ちょっと苦手意識というか、手放しで褒められない映画だった。言ってしまえば簡単で、「男の妄想映画」としてレッテル貼りをしたせいで(そういう友人>>続きを読む

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ(2007年製作の映画)

3.9

ペプシコーラとかカップヌードルの、ちょっと凝ったCM、世界を作り込んだ映像が好きな人なら、きっと好きになれる。そんな映画。僕は好きです。

映画マニアの馬鹿話を形にした映画としては評価できる。が、スト
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裸足の季節(2015年製作の映画)

4.3

伝統と因習の残るトルコ黒海沿岸の小さな村。
両親を亡くし祖母の元で育てられた5人姉妹の、別れと自立を描く。という説明では何のことかわからないだろうが、まあ、予告編を観ればどういう映画かは伝わるのではな
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ハンニバル(2001年製作の映画)

4.5

パッケージは怖いが、全編通じて上品な映画ではある。もちろん殺人鬼の映画だから残酷なのだが、伏せられた、明示されない恐ろしさに気付いた時にこそ作品の本当の怖さを思い知ることになるだろう。
その為の残酷描
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シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

5.0

傑作だった。
怪獣映画としてだけでなく、日本映画史上に残る作品になるのでは。真昼のシネコンなのにスタッフロールの後に拍手が沸き起こった、しかも変なマニアに周囲が巻き込まれたわけではなくて、という希有な
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羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

3.7

映画も悪くないけれど、このシリーズは小説にこそ凄みがある。怖さの根拠やディテールを執拗に描く文章は、ちょっとした陶酔感があって好きだった。
レクター博士のふとした表情の陰りは、映像ならではだけど。
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帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)

5.0

ポスターに書かれた「笑うな危険」という惹句そのままの、興味深い作品。

では、何が危険か。
見ている僕達が危険なのだ。
どう危険か。
僕達は、歴史や正義を取捨選択できるから危険なのだ。たぶんヒトラー氏
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カルテル・ランド(2015年製作の映画)

4.5

いわゆるメキシコとアメリカの麻薬戦争の映画。
メキシコでは自警団が組織され、かなり過激に“カルテル”との武力闘争が行われた。その中心人物だった医師と、アメリカ側でやはり自警団を組織して国境警備にあたる
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姑獲鳥の夏(2005年製作の映画)

2.3

推理物としては極めて雑な種明かし。だがこれこそが「幽霊の正体見たり」を執拗に書き続ける、原作の「京極堂 妖怪シリーズ」そのものであり、この作品の機微だろう。

まだ舗装道路が完備されていない東京と、農
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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

5.0

イギリス的なものが好きな人におすすめ。
ここまで孤独について考えさせられる映画なのに、同時に幸福と希望を感じてしまう。邦題は長すぎる気がするけれど。


「あなたが普通じゃないから、世界はこんなに素晴
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インデペンデンス・デイ(1996年製作の映画)

2.6

今でこそ「超大作にして超馬鹿映画」として語り継がれているが、基本的には、アメリカの田舎にあるシネコンで若者達から小金を回収し、ついでにレンタルでも儲ける、そんな狙いの映画だったのだと何かで読んだ。だか>>続きを読む

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)

4.5

王に生まれたものが王の資質を持っているわけではない。そして、修正したくて治せる不具合だったら、誰も苦労しない。

この作品では吃音に悩む英国の王(しかも緊迫した世界情勢は王の振るまい如何で変動しそうだ
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サイレントヒル(2006年製作の映画)

2.8

タイトルのサイレントヒルとは、日本に併合される前の静岡県のこと。SilentなHillということで、ほぼ逐語訳だが、この由来を覚えている人もずいぶん減ってしまった。そう、「ひかり」や「のぞみ」が素通り>>続きを読む

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

3.2

昔ながらのラブコメディーみたいな画面がミスリードを誘う、それ以外にも仕掛けが多い、なかなか考えさせられる作品だった。
我が事として共感できるか否か、そして感情移入できるかどうかで物語を評価する人にとっ
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巨神兵東京に現わる(2012年製作の映画)

2.5

理不尽や破壊に関しては徹底的に理詰めで、そして奇跡には無防備なほどに理屈抜き、それが庵野監督のセオリー。少なくとも、大きな異形が出てくる作品は、それ以外のかたちを作れない。
この短い作品も、その方針は
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風立ちぬ(2013年製作の映画)

5.0

宮崎駿監督、最後の作品。いや、最後かどうかは油断できないが、ともかく老境の詩情は感じられた。ファンタジックな自然と日本を描いてきた監督のもうひとつの顔、ミリタリー趣味が盛り込まれているのだが、その描き>>続きを読む

NANA(2005年製作の映画)

2.0

主役2人の「再現度」だけが見どころ、だと思う。
歳の離れた友人が漫画にはまっていて、その影響で(漫画を借りて読破した後に)映画館まで行った。なるほどティーンエイジャー向けだなー、としか思わなかった。だ
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マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)

3.9

「プレコグ」なる超能力者が犯罪を予知するため、事前にその芽を摘むことが可能になった未来。ワシントンD.Cでの社会実験は完璧な成果を挙げ、いずれアメリカ全土に適用されるのも時間の問題。この「未来の犯罪者>>続きを読む

ボーン・アイデンティティー(2002年製作の映画)

4.0

冷戦終結後に、スパイ映画が「身内同士の戦い」ばかりになった。この映画も、その新しいトレンドに沿って作られた作品。
まあ、ネオナチは貧乏人ばかりで、アラブ人は怖いし、途上国やアジア諸国を名指しで敵にする
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空気人形(2009年製作の映画)

3.2

透明感のある映像と、可愛さと毒のバランスが印象的な作品。
音楽も良かった。
ただし、あざとい、とまでは言わないまでも、各所に配置された「切ないスイッチ」を次々と押されているような感じがして、とびきり切
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ロブスター(2015年製作の映画)

4.7

へんちくりん、な映画だった。
悪い夢のような、寓話的なストーリー。が、明確な教訓が示されているわけではなくて、僕達の常識を切り取って大げさに制度化・常識化してみたら、世界はこんなにもオモシロおかしく愛
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アイヒマン・ショー/歴史を写した男たち(2015年製作の映画)

4.6

悪名高き「ホロコースト」、いわゆる「ユダヤ人問題の最終的解決」の責任者であったナチス親衛隊将校、ルドルフ・アイヒマンの裁判を映像として残そうと努力した人達のストーリー。

戦後、アルゼンチンで拘束され
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ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)

4.0

言葉が認識を作り、認識がまた言葉を作る。鶏が先か卵が先か、という話になると、僕達は言葉で考え、社会全体で言葉を作ることから、日常においては言葉が認識を作る、と言っていい。

実際、言葉が丁寧な人は、も
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ロッタちゃんと赤いじてんしゃ(1992年製作の映画)

4.4

今でこそ珍しくない、可愛くてお洒落なヨーロッパ映画。当時は(少なくとも日本で、普通の映画館で上映するのは)画期的だった。
全体的に鮮やかで、小物の趣味がかわいらしくて、生意気なロッタちゃんの日常を眺め
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パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

4.5

ずいぶん昔に、監督本人と話す機会があった。彼とは知らずに何人かでお茶を飲んだ、その程度の雑談だったのだが、彼の言葉は今も覚えている。
「粉々に砕いた世界を使ってモザイク画を作ったら、元の世界が立ち現れ
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