63さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.7

『aftersun/アフターサン』ある夏を一緒に過ごした父娘のバカンス。海も空も朝も夜も部屋もプールも断片的に風景やエピソードを描く。時折カットインするホームビデオや現在の二人の姿で映画自体が尊く繊細>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.8

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』何も取り柄が無いのは何でも出来るという証。分岐した並行世界で最弱なエヴリンが覚醒する。カンフーに満ちた新解釈で魅せるマルチバースの根底に流れるは普>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

5.0

『THE FIRST SLAM DUNK』試合展開の隙間に回想場面を挿入して人物背景まで語る構成はスラダン初心者にも親切かつ有効に熱狂を生み出す。アニメらしからぬ立体的臨場感により映画館の観客席から劇>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

5.0

『バービー』徹底してエンタメに舵を切りながら若草物語然り今の時代に一石を投じるGガーウィグの脚色力。ファシスト扱いしたかと思えば比喩的に女性の権利を訴えた末に人間としての生き方を性差関係なく肯定する。>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

5.0

『枯れ葉』新作発表の度に過去最高を更新するカウリスマキが辿り着いた至上到達点。女は皿を買い、男は花を買う。なかなか進展せずに焦れったい二人の恋物語を色と歌と酒が飾り立てる。権力でなく弱者に寄り添う視点>>続きを読む

タクシデルミア ある剥製師の遺言(2006年製作の映画)

4.3

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』自慰行為に耽る祖父、大食い名選手の父、剥製店を営む息子の三世代に渡るエロゲログロな奇天烈偉人伝は人間の欲(性・食・所有)を象徴化する。ラストの衝撃はトラウマ必至で脳>>続きを読む

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)

4.3

『アクト・オブ・キリング』大虐殺を犯した加害者達で殺戮を再現して映画化する様子を追った実録ドキュメント。殺害の手法や持論を武勇伝として語る能天気なオッサンに「冷たい熱帯魚」のでんでんを想起。ラストに見>>続きを読む

アキレスと亀(2008年製作の映画)

4.5

『アキレスと亀』アートの為なら死も辞さぬ芸術残酷物語。有名画家の自伝映画は数多あれど売れない自称画家の半生を描く本作は珍しい。スクリーンに駄目で下手な絵画(北野武作)が堂々と映り込み、少年期セピア青年>>続きを読む

サンタ・サングレ/聖なる血(1989年製作の映画)

5.0

『サンタ・サングレ/聖なる血』なぜ男が連続殺人鬼と化したかを幼少期のトラウマを起点に半生を紐解く。本編に2回登場する鳥が飛び去る手のマイムは各々異なる意味を表して美しい。血塗れの残酷描写に徹しながらも>>続きを読む

オアシス(2002年製作の映画)

4.8

『オアシス』たとえ二人の出逢いがレイプであっても紛れもなく純愛。「私を好きになってくれた」と脳性麻痺の女が一途な男の思いを受け入れる。この恋を認めなければ劇中の世知辛い面々と同類として写し鏡になる構造>>続きを読む

ワンダフルライフ(1999年製作の映画)

4.6

『ワンダフルライフ』亡くなった人が成仏する最期に観たい人生の記憶を映像化する施設職員を描いたお仕事映画。役者と一般人の話し方の違いや実際の撮影現場の裏側を物語に取り入れてフィクションとリアルの境界線は>>続きを読む

R100(2013年製作の映画)

4.0

『R100』日常へ唐突に訪れる女王様からの快楽行為は高難度のシュールさで戦争プレイにまで発展する。本編で本作の自己批判的ツッコミを挟み各ストーリーを短編風に章立てる。更に松本人志監督作品でないと断言し>>続きを読む

トニー滝谷(2004年製作の映画)

4.7

『トニー滝谷』村上春樹の原作短編を読む西島秀俊のナレーションを時折イッセー尾形と宮沢りえが台詞として呟く。カメラの横移動で紙芝居を捲るように切り替わるシーンと室内なのに通り抜ける風。斬新な演出や坂本龍>>続きを読む

楽日(2003年製作の映画)

5.0

『楽日』主演は映画館。現在は寂れてハッテン場と化した福和大戯院の閉館日を描く。もぎりの女、映写技師、出逢いを求める客、噂の幽霊、老人と子供が脇役として館内にドラマを与える。無人の客席を固定カメラ長回し>>続きを読む

ベルヴィル・ランデブー(2002年製作の映画)

5.0

『ベルヴィル・ランデブー』行方不明の孫を探しにお婆ちゃんが犬を連れて海を越えての大冒険。僅かに台詞を抑制した分デフォルメされた絶妙な描写と過去と現在の差を活かした巧妙な脚本で魅せる。カエル漁やマフィア>>続きを読む

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

4.7

『パンチドランク・ラブ』プリン大量購入のマイレージで会いに行く本筋の面白遠距離恋愛が霞むほど車横転やオルガンや激ギレがシュールで笑う。一目惚れはキラキラ映像とピコピコ音楽で彩られて抱き合う二人を祝福し>>続きを読む

ピストルオペラ(2001年製作の映画)

5.0

『ピストルオペラ』凛々しき江角マキコ、麗しき山口小夜子、妖しき韓英恵がアニメの如き極彩色に映える清順流デスバトル絵巻。生活指導の先生の頭上を飛び越える野良猫へ陽が射す一瞬の構図美に痺れて「バカ!」の絶>>続きを読む

ラブ&ピース(2015年製作の映画)

3.2

『ラブ&ピース』このアリエナイ世界観に対して如何に許容できるかで本作を楽しめるかが決まる。自分は亀が作詞作曲した時点で折り合いを付けた。おかげで巨大化するラブちゃんが見させてくれた一時の夢物語の儚さを>>続きを読む

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)

3.3

『龍三と七人の子分たち』西郷像前へ爺さんが集まるだけで謎のワクワク感が。龍三親分こと藤竜也にトンデモ衣装を着させた意義とトンデモ扱いを受けるモキチを中尾彬が演じた意味はデカい。予測できるギャグも不意を>>続きを読む

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)

3.4

『インヒアレント・ヴァイス』主人公の探偵ドックと同じ目線で展開を追っていく仕立て。でも次々に濃いキャラが登場する中で人物相関図を把握しなきゃならず、結構な量の台詞を字幕で読まなきゃならず、その両方の忙>>続きを読む

ハーモニー(2015年製作の映画)

3.4

『<harmony/>ハーモニー』螺旋監察官の赤い制服、吹き出る鮮血、健康を約束されたピンクの街、テーマカラーは赤系の筈が全く暖かみや温もりは感じない。その冷淡な赤の異常さで原作の世界観を表現する。そ>>続きを読む

岸辺の旅(2015年製作の映画)

3.4

『岸辺の旅』死んだ夫の空白の三年間を妻と共に巡る旅。その二人の旅路に幽霊が絡む。いつもの黒沢清なりの演出(暗と明を生かすテクが見事)で幽霊が現れては消えていく。しかし全く恐怖は感じない。各々の登場人物>>続きを読む

屍者の帝国(2015年製作の映画)

3.5

『屍者の帝国』原作の大胆な設定変更と潔い添削取捨が成功。友情を軸にする事で目的意識が明確になり、各国の文化的差異で景観が変移して飽きない。カラマーゾフの虚無感、大里化学での大立ち回り、終盤のロンドン塔>>続きを読む

飛べないコトリとメリーゴーランド(2015年製作の映画)

3.5

『飛べないコトリとメリーゴーランド』現実の厳しさから自身が思い描く妄想へと逃避する女・コトリ。その妄想世界での大人になりきれてない非現実感がチャランポにドンピシャ。もも&小春がリアル世界にて別の役でマ>>続きを読む

ローリング(2015年製作の映画)

3.6

『ローリング』憎めぬダメ男の転落をリアル且つシュールにエロスを絡めて描く冨永演出と役者陣の巧みさ。主人公・権藤のモノローグで〝これが現在の私です〟という自己紹介と共に餌を求めるヒナ鳥が映るので???と>>続きを読む

さよなら、人類(2014年製作の映画)

3.7

『さよなら、人類』整った構図のまま画面は動かない、全体的に褪せた色調で人物は白塗り、という特異なビジュアル。その空間の中で語られるはナンセンス、ペーソス、アイロニーたっぷりのギャグ。巧い絵と短い話の連>>続きを読む

さようなら(2015年製作の映画)

3.7

『さようなら』退廃した自然の中でアンドロイドと共に暮らす難民の女。限り有る者と限り無き物…その対話は次第に哲学的問答へと変移。ラストは朽ち逝く裸体と咲き誇る花々に息を飲む。2時間弱の映画に悠久の時の流>>続きを読む

恋人たち(2015年製作の映画)

3.9

『恋人たち』彼女を殺された男は憎悪を。生活に圧された妻は性愛を。友情を逸らされたゲイは当惑を。三者三様にスクリーンへと丸裸で曝け出す。その姿は無名と有名の役者の不思議なアンサンブル。橋口監督は優しい眼>>続きを読む

6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

3.9

『6才のボクが、大人になるまで。』3時間弱に凝縮された12年に及ぶ軌跡と役者達の嘘のない成長のグラデーション。その移ろいと共に綴られる何気ない日常に大切な瞬間が散りばめられていて、映画を振り返った時に>>続きを読む

海街diary(2015年製作の映画)

3.9

『海街diary』女優たち四者四様の佇まい、女ならではのコミュニケーション、移ろい変わる四季の景観、古きよき日本の風習、切ない恋愛、淡い青春、制服、喪服、部屋着、そんな数々の〝美しさ〟が菅野よう子の音>>続きを読む

ディアーディアー(2015年製作の映画)

3.9

『ディアーディアー』地元で久々に顔を会わした三兄妹。長兄の土地売却、妹の浮気沙汰、次兄の虚言癖、彼等の鬱憤が通夜を境に爆発する。木魚で殴打、喪服に包丁、山中を追走。停電で我に返り揉め事が中断する場面が>>続きを読む

滝を見にいく(2014年製作の映画)

4.0

『滝を見にいく』遭難映画であってもパニックムービーではない。7人の遭難者は全員おばちゃん。パニックといえば得体の知れない何かを見付けて騒ぐ程度。何かしら色々と入っている鞄の中身で凌いでしまう。紅葉とモ>>続きを読む

Mommy/マミー(2014年製作の映画)

4.1

『Mommy/マミー』愛の熱い母親、心で走る息子、力を貸す隣人。不器用な3人の関係性は正方形で繊細に切り取られる。人物は象徴的に、風景は抽象的に、時に美しく、時に荒々しく。その1:1のアスペクト比が意>>続きを読む

野火(2014年製作の映画)

4.2

『野火』超小刻みに揺れる手ブレ、容赦ないスプラッター描写、荒々しくも丁寧に場面を刻む編集、毒を放つように美しい風景、塚本演出の持ち味が活かされて未だかつて観た事のない戦争映画に。熱波、湿度、腐臭、羽音>>続きを読む

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

4.3

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』爆破、爆発、爆撃、爆炎、爆裂、爆音、爆走、こんなにも〝爆〟という漢字一文字に相応しい映画は他に無い。泥臭くて血生臭くて男臭いジャンクアクションかと思いきや「女ナメ>>続きを読む

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(2014年製作の映画)

4.3

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』イヴがパッツン頭にした時点から心に確固たるトキメキが。音楽で救われる若者たちを音楽で包み込んだ音楽映画。楽曲のみならずスチュアート・マードックの感性が服装にも映像にも反映>>続きを読む