長内那由多さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ホワイト・ノイズ(2022年製作の映画)

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私映画作家ノア・バームバックが私映画ブームに背を向けてドン・デリーロの小説を映画化。一筋縄ではいかない社会批評だが、盟友ドライバーとガーウィグが主演し、コロナ禍を経た中年の死生観の物語とも読めるので、>>続きを読む

少女バーディ ~大人への階段~(2022年製作の映画)

5.0

勝手にHBO版ラスアス前夜祭、その2。没落貴族の娘が親の決めた縁談を壊すべく、ありとあらゆる手段で抵抗していくコメディ。13世紀を舞台にした時代劇なのに演出は現代風で監督、脚本レナ・ダナムのセンスが光>>続きを読む

深夜カフェのピエール(1991年製作の映画)

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ずっと昔にVHSで見たな。エマニュエル・ベアールが美しすぎて息を呑んだ記憶。

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

5.0

異能と異貌ゆえに孤独を抱えるヒロインの前に、同じ能力を持った男が現れる。人間の理を超えて惹かれ合う野獣のような本能に圧倒された。原作は『ぼくのエリ 200歳の少女』のヨン・アイビデ・リンドクビスト。本>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

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才人アレックス・ガーランドにしてはやけに直截的なホラー。実は細かく演じ分けられているMENの正体に気付くまではもう少し違和感を抱いた方が良いので、邦題は説明し過ぎ(ロリー・キニアはよくぞ付き合った)。>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

5.0

なんてストイックな映画なんだ!研ぎ澄まされ、時に誇張された音響演出とパンデミックによって際立つヒロインの孤独。岸井ゆきのはボクシング映画史上、最も孤高のボクサーだ。彼女が感情のブラックホールに陥る中盤>>続きを読む

レイモンド&レイ(2022年製作の映画)

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自分に近い題材だった事もあってか、感情移入して見てしまった。ユアン・マクレガーとイーサン・ホークの共演に、開始10分で「あぁいい映画だな」と確信。とかく物事の一面だけを見て語りがちだが、人間はそう単純>>続きを読む

その道の向こうに(2022年製作の映画)

5.0

こういう映画があるからアメリカ映画はやめられない。アフガン帰還兵の女と義足の男の邂逅。かつて『ウィンターズ・ボーン』で辺境からアメリカを射抜いたジェニファー・ローレンスが繊細と孤高を取り戻し、ここでは>>続きを読む

クロティルダの子孫たち -最後の奴隷船を探して-(2022年製作の映画)

5.0

奴隷制廃止後も運行し、秘密裏に沈められた奴隷船が発見される。被害者と加害者、それぞれの子孫達は度々“歴史”と“物語”という言葉を繰り返す。歴史を省みる行為に物語があり、そこに映画が興る。

原題は“D
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ナワリヌイ(2022年製作の映画)

5.0

今年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞部門でショートリストに挙がっている作品。ロシアの反体制活動家ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件と、その後の氏の投獄までを追う。九死に一生を得た後、ジャーナリストと組んで暗>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

5.0

レマルクによる原作小説をドイツで再映画化した力作。過剰な装飾を排したストイックさはハリウッド映画にない詩情を感じさせる。近代兵器が次々と登場する中盤の地獄絵図に息を呑んだ。これも1920年代頃から現在>>続きを読む

バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

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全くノレなくて困ってしまった。メキシコを代表する世界的映像作家の主人公が人生の路頭に迷い…と書くまでもなく、飛翔する冒頭から夢現を横断するイニャリトゥ版『81/2』。初期作の脚本ギレルモ・アリアガやオ>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

5.0

正月映画だ!豪華キャストからプロダクションデザインまで隅から隅までお金をかけ、小道具も違和感(ストリーミング恒例のヘンテコ字幕ではない)も余さず回収する贅沢なミステリー映画。前作同様、風刺もしっかり効>>続きを読む

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

5.0

デル・トロならではのダークで美しい映像が堪能できるパペットアニメ。ムッソリーニ支配下のイタリアに設定された物語からは死の匂いが立ち込め、フェアリーテイルへのロマンがある。子供向けに作られているとはいえ>>続きを読む

ナニー(2022年製作の映画)

5.0

セネガル移民のヒロインは間もなく我が子をアメリカに迎えようとしているが、彼女の周りで奇妙な事が…一級のプロダクションデザインと端正な語り口による“怪談”。搾取する側も疲弊しているというアメリカの現在の>>続きを読む

"Sr." ロバート・ダウニー・シニアの生涯(2022年製作の映画)

5.0

インデペンデント映画の巨匠ロバート・ダウニーの足跡を振り返るドキュメンタリー。息子ダウニーJrが父親を看取るまでの父子ドラマにもなっていて泣けた。NYの雑多な街並を撮らえたモノクロームも美しい。夏に公>>続きを読む

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)

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『NOPE』よろしく人を殺す雲が立ち込め(何かしらの毒性を持っているらしい)、世界中がロックダウンに陥ってしまう。パンデミック前に製作された予見的な心理劇で、やはり深刻な問題はセックスというのが梅毒が>>続きを読む

おやすみ オポチュニティ(2022年製作の映画)

5.0

当初90日間と予想されていた耐用年数を超え、15年に渡って火星を探査し続けたロボット“オポチュニティ”とNASAスタッフを追ったドキュメンタリー。火星でのオポチュニティの様子はILMによる再現でさなが>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

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前作も「これは実写映画ではなくCGアニメでは?」「ゲームのムービーシーンを延々と見ている気分」という思いで全くノレなかったが、今回もそれは変わらず。中盤1時間をかけて紹介される海洋シーンにも魅せるだけ>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

5.0

S・S・ラージャマウリ監督にお願いしてアベンジャーズ撮ってもらった方がいいんじゃないですかね。ハリウッド映画の長尺化にいよいよ歯止めが効かなくなっている今、3時間をモノともしないラージャマウリにハリウ>>続きを読む

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

5.0

キモチ良過ぎ。前作『ア・ゴースト・ストーリー』で幽霊の視点から時空を超えて人類史を垣間見、今度は死出の旅に出たサー・ガウェインの伝説を幻視する。いよいよ極まる尋常ではない美意識に貫かれたショットと、ダ>>続きを読む

ウエスト・エンド殺人事件(2022年製作の映画)

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1950年代のウエスト・エンドを舞台にアガサ・クリスティを借景したミステリーコメディ。凝った美術とトボけた音楽に座組もダブってウェス・アンダーソン映画の影響が色濃い。久々に軽めのシアーシャ・ローナンが>>続きを読む

ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦(2022年製作の映画)

5.0

火山学者クラフト夫妻を追ったドキュメンタリー。70年代から驚異的な映像を収めてきた火山映画のパイオニアであり、貴重な映像の数々に圧倒された。同じ時代のフランスに生まれ、共に火山に魅せられた夫妻の“地質>>続きを読む

聖なる証(2022年製作の映画)

5.0

見入った。4カ月間絶食している少女は果たして神の奇跡か、ペテンか。聖と俗、強固に信じられた物語世界の内と外を劈くように往復するフローレンス・ピューの腰と、真っ青な衣装。せめてもと思って部屋を真暗にし、>>続きを読む

マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル(2022年製作の映画)

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ケビン・ベーコンいい人だなぁ。これやったらMCU出れないじゃん!と思ったけど、『X-MENファースト・ジェネレーション』で悪役やってるから俳優ケビン・ベーコンで、なおかつマルチバースでは悪のミュータン>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

5.0

『サクセッション』チームならではの“絶対に笑ってはいけない注文の多い料理店”。エッセンシャルワーカーという呼び名でコロナ禍に駆り出された労働者や、買い出し代行業務の事が頭をよぎる。ちょっとボリュームは>>続きを読む

魔法にかけられて2(2022年製作の映画)

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遅過ぎた続編。エイミー・アダムスの器用さであれば造作もなく前作を再現できてしまうのだけど、アカデミー賞ノミネート5回、48歳の彼女になぜこれを今やらせる。『ウエストワールド』でのしかめっ面に「そうじゃ>>続きを読む

スピリテッド(2022年製作の映画)

5.0

楽しい。クリスマスの精霊ウィル・フェレルが対立を煽る炎上マーケティング会社の社長ライアン・レイノルズを改心させようとする現代版『クリスマスキャロル』で、しかも本格ミュージカル!プロットはツイストが効い>>続きを読む

HiGH&LOW THE MOVIE2 / END OF SKY(2017年製作の映画)

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宝塚版ハイローに備えて何か見ておこうと思ってシリーズ初見。ナメてたんだけど、アクションスタントが凄くて最後まで楽しかった。登場人物多すぎて笑う(覚えられなくても問題なし)。

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

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夢に現れた相手と恋におちる、というこの作家ならではのロマンチシズムは嫌いじゃないが、確かなメッセージに対して語りのペースは定まらず、最終盤まで蚊帳の外のような気分だった。途中、『魔女の宅急便』と“説明>>続きを読む

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

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比喩でも何でもなく開始1秒で泣いた。チャドウィックの急逝を受けてスタッフ、キャストが並々ならぬ決意で挑んでいる事が伝わってくる。故に切れなかったんだろうなぁという部分も多く、フェーズ4全体に言えるコン>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

5.0

家賃を旅行代に当てた事からトンデモないカオスに巻き込まれていくコメディ。信じられないバカしか出てこないが、やりたい事と行きたい所を挙げるヒロインらの姿に無限の可能性を感じずにはいられない。

女優オー
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グッド・ナース(2022年製作の映画)

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点滴薬で多くの患者を殺した実在の看護師チャーリー・カレン逮捕を描く。ジェシカ・チャステイン、エディ・レッドメインの2大性格俳優が本領発揮。未だ動機は解明されておらず、これがライアン・マーフィーだったら>>続きを読む

僕の巡査(2022年製作の映画)

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1950年代と90年代を往復しながら描かれる3人の男女の愛憎劇。時代がそうさせたとはいえ、人の加虐性について思わずにはいられない。ハリー・スタイルズ(なんて指が綺麗なんだ!)、『ザ・クラウン』のエマ・>>続きを読む

ウェンデルとワイルド(2022年製作の映画)

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『コララインとボタンの魔女』以来、13年ぶりのヘンリー・セリック監督作。製作、脚本、出演を務め鬼才を担ぎ出したジョーダン・ピールの功績は大きいが、理性のピールと本能のセリックは必ずしも上手くマッチして>>続きを読む