たわらさんさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

4.0

『ペンタゴン・ペーパーズ』や『新聞記者』など汚職の真相を暴く作品は近年だと題材として見かける機会が多いですが、この時代に制作されたポリティカルスリラーとして興味深い。ただ奥崎謙三の暴力性や思想に対して>>続きを読む

哀しき獣(2010年製作の映画)

3.3

ジョンウィックから娯楽性を薄めて韓国ノワールを振りかけたアクションもの。各キャラの人間像が見える前に様々なことが起きても没入感に欠ける。その思惑の交錯も複雑な割には面白みに欠けるんですよね。派手なカー>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.0

黒澤明なりの生きるとはどういうことかを示した作品。人は社会に溶け込んでいくとシステマティックな時間を過ごすことになるのが性であり、効率的であり楽なのです。時間が早く感じるようにどこか空虚な時間を共にし>>続きを読む

エブリシング(2017年製作の映画)

3.7

『FIVE FEET APART』も大概でしたが、難病もののザルさは万国共通なのかもしれません。異様な豪邸、健康的過ぎる肉付き、襲来する理想な異性と初っ端からツッコミどころが多いので早い段階でセカイ系>>続きを読む

愚行録(2017年製作の映画)

4.0

全編を通してここまで鬱々しさに徹底しているのも珍しい。罪悪感を抱かせるため田中武志が障碍者を演じる冒頭に本作の嫌悪感が収斂されている。脚本やミステリー部分、心の機微に評価せざるを得ないが好きになれない>>続きを読む

亀は意外と速く泳ぐ(2005年製作の映画)

3.8

何気ない日常に目を向けてみると新たな非日常空間を見せてくれるんじゃないかと思わせるリアル的ファンタジー作品。如何にして"そこそこ"を演じるかというミッションにド派手な友人を配置する構成が巧い。とくかく>>続きを読む

オンリー・ザ・ブレイブ(2017年製作の映画)

3.5

森林火災の消防が娯楽性を落として淡々としているのは史実だから良いと思うんですが、キャラの行動やドラマ部分がエンタメ的なのでちぐはぐな印象を覚える。素晴らしい題材なのに御涙頂戴のために用意したエピソード>>続きを読む

椿三十郎(1962年製作の映画)

4.0

剣術というものは自己満足や自己顕示のためではなく、防衛や正義のために要するものであると三十郎は謳う。故に剣が鞘に収まっている世の中であるのが理想であり、三十郎は殺陣に歓喜する若侍に一喝する。緋村剣心の>>続きを読む

ラヂオの時間(1997年製作の映画)

3.9

『カメラを止めるな』や『テロ、ライブ』など時間制限を設けつつリアルタイムで進行していく即興劇系に外れ無し。役者の制御が効かず混沌と化していく物語と並行に走り回るスタジオとまさに喜劇。クリエイター目線の>>続きを読む

劇場版デュエル・マスターズ 黒月の神帝(ルナティック・ゴッド・サーガ)(2009年製作の映画)

3.9

意外にも物語や設定が作り込まれてることに驚き。悟空を想起させる勝舞の台詞の数々や、ヒールの悲しい過去と兄妹間の決別、主人公の挫折と仲間のエール、サトシを想起させるクリーチャーとの絆といい、既視感の集合>>続きを読む

おやすみ オポチュニティ(2022年製作の映画)

3.6

新しい家族のように見守ってきた火星探査機。性能に影響を及ぼすわけではありませんが、目覚ましソングをかけるルーティンはさも人の様。宇宙探査機のドキュメンタリーとして『アポロ11』を彷彿とさせますが、こち>>続きを読む

灼熱の魂(2010年製作の映画)

3.7

1+1=1をやりたくて肉付けしていったんじゃないかと思わせるご都合展開や行動に疑問を抱かざるを得ない。粗があるものの負の連鎖の悲劇性はテーマとして素晴らしいですが、母・ノワルの遺言は愛でもなんでもなく>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

4.2

人物紹介に思えた過程を通して事件が起きた時には調査と真相が判明している新しいミステリーの爽快感。証拠隠滅に対してLIVE配信とかいうしょうもないカウンターを危惧したが、バカバカしすぎるパワープレイで最>>続きを読む

アナベル 死霊博物館(2019年製作の映画)

3.0

お化け屋敷。特段面白くもない人間ドラマが合間合間に入ってくるため没入感にも欠ける。

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.6

常に動き続けるバスケはアクションの最難関である中、原作である漫画のコマとコマの繋ぎ目を徹底的に描くことでリアルなバスケが行われている。映像化されたことで判明したことが人物の配置や点取りゲームに矛盾点は>>続きを読む

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

4.1

ギレルモ・デル・トロの真髄にある生命のグロテスクさなどはアニメ表現により緩和されている(ファミリー向けにした?)が、残酷であるリアルな世界が垣間見えるファンタジー作品として一級品。ピノッキオに命を宿し>>続きを読む

鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成(2022年製作の映画)

3.1

相手の返答を待たずして喋り出す会話劇や演出の根本的な稚拙さは変わってないですが、一部の役者がフィナーレに向けてノッていた気がします。国土錬成陣のスペクタクルやド三流の一連のカタルシスは流石であり、原作>>続きを読む

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)

2.7

何故か皆イカれた自己中女に心酔していく怪奇作品。人と人が繋がることへの描写が安直であり、
実父や先生、モブ生徒に悪役に徹する台詞を与えられているのも気持ち悪く、とにかく人間描写が粗悪。また前時代的な価
>>続きを読む

八日目の蝉(2011年製作の映画)

4.0

八日目の蝉が一見悲劇なような出来事も捉え方では幸せになるように、本作は各々降り掛かる試練をプラスへと転換させようとする物語でした。希和子と恵理奈との4年間と21歳の恵理奈の怒涛の物語は見応えがありまし>>続きを読む

パンダコパンダ(1972年製作の映画)

3.8

パンダ喋るのかよ!
どことなく不気味な感じが喪黒福造を彷彿とさせて、当時のパンダは高畑×宮崎には外来した異星人かなんかに見えたんでしょうか。日常ファンタジーの原点ですね。

水曜日が消えた(2020年製作の映画)

3.5

無限の可能性を秘めてるアイデアを活かさず、本作は"火曜日"と一ノ瀬と安藤先生の3人によるヒューマンドラマであり、この設定で生きるであろうファンタジーとミステリー、ホラーの要素は相当薄味。主人公が共生の>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

4.5

華子はまさしく王子様に出会えたように恋に落ちたが、その結婚は制約の中に生まれたものであって、子孫繁栄の役割を与えられた女性または男性の従属として尊厳が損なわれた現実に気付きます。冒頭と同じ様にタクシー>>続きを読む

SING/シング:ネクストステージ(2021年製作の映画)

2.7

前作で負け犬たちの成り上がりストーリーは完結していたため、ネームを獲得したアフターストーリーとしては葛藤と苦悩の描き方が弱い。この個々のサイドストーリーが微弱であるが故にラストへのカタルシスにも繋がら>>続きを読む

劇場版 きのう何食べた?(2021年製作の映画)

3.2

TVドラマの映画化なんて大した事ないにしてもテレビSPにすらならない微妙な作りになっている。ドラマシリーズはシロさんのケンジに対する愛情表現に苦悩して、すれ違うLGBTに関係ない普遍的な愛の物語であっ>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

4.2

欺瞞に満ちた国によって無知な若人が道具として消費されていく一連の無慈悲さがえげつない。撃ち落としている"何か"を人として認識した瞬間に計り知れない罪悪感に苛まれる。人である事が死に近づく残酷な世界であ>>続きを読む

余命10年(2022年製作の映画)

3.6

他の余命ものよりは幾分マシでしたが、他が生命に対する扱いが粗末過ぎるだけかもしれません。全体を通して表面的な部分を映し出しており、パートナーへの愛や自己欺瞞、生への執着の想いがキャラクターに篭っていな>>続きを読む

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

3.8

サイケデリックな映像に面を喰らいつつも、鉄を覆っていく様は身体の中の鉄分が溢れ出してくる様を表しているのではないか。今石洋之が作る世界を彷彿とさせて、この非現実感を実写に落とし込んでいるの驚異的である>>続きを読む

善き人のためのソナタ(2006年製作の映画)

3.9

監視社会と対極的にある文化に秘めてるのは人の美しさであり、ヴィースラーの心を融解させたのは芸術である。文化が紡ぐ人と人の繋がりに幸福が潜んでいる。演出は良いが物語としては単調か。

恋の渦(2013年製作の映画)

4.4

良い意味で酷い。
有害な男性性がこれでもか!と描かれており、プライドの愚行っぷりが本当に見てられない。外では仮初の社会性を纏いつつ、パーソナルな場では特性が表に出て気が大きくなるのが本当に気持ち悪い。
>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.7

炎の力で水を沸騰させて生まれた水蒸気をエネルギーとする蒸気機関車のように最後まで駆け抜ける映像的快楽全開の超エンタメムービー。迫力のある音響や怒涛のスペクタクルとして今年の『トップガン マーヴェリック>>続きを読む

切腹(1962年製作の映画)

4.1

強者が優位的な立場から集団となって個の弱者の上から伸し掛かる空虚さ。娘婿が金品狙いであったのも事実であり、暴君・斎藤勘解由が疑うのも正当な心構えであるものの、ほんの少しの優しさを分けてやるだけでよかっ>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

4.2

是枝監督が一貫する擬似家族性は本作でも発揮されており、各々の関係性が傷を想起させながらもその傷を赦しあえる関係である。欠陥のあるヘジン号の親探しはお互いを支え合い、洗車で水と一体になる一時的な罪悪感か>>続きを読む

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー(2021年製作の映画)

4.0

フィリップ作品はボケも展開も読めすぎちゃうんですが、阿保さ加減が突き抜けていて気持ちが良いんですよね。スパイダーマンキスのパロディが酷すぎて笑っちゃいました。もう少し、最後の作中劇に繋がるカタルシスが>>続きを読む

ショート・ターム(2013年製作の映画)

3.8

持つ者が持たざる者に一方的に与えるヒーロー映画とは異なり、大人も子供もフラットな目線でヒーリングされていくのが心地よい。他者を愛し、自分も愛してやることで同じ景色も変わってみえてくる。

燃えよドラゴン(1973年製作の映画)

3.8

身一つで挑む主人公や武闘大会、悪の組織のコテコテ具合が午後ロー感があって良いですね。『ドラゴンボール』に影響を大きく与えた作品でしょうし、ブルース・リーのヒロイック性は凄まじい。

Don't thi
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許されざる者(1992年製作の映画)

3.4

新しく仲間を確保した辺りで本作も『荒野の七人』スタイルなのかな、と錯覚させられるくらいに西部劇の勧善懲悪のイメージは強い。故に善悪を取っ払った西部劇は斬新に映ったに違いないし、『ブロークバック・マウン>>続きを読む