凍らせたカルピス、乾麺、あるいは墨といった、「とかさなければ使いようのないもの」が、日常生活の中で度々登場する。その演出意図はおそらく平易で、固まっているものをとかす、ようにして、固まりつつあった親->>続きを読む
邦題が秀逸というか反則というか、これはとある批評家も書いていた事なのだけど、このカメラワークの主体が「(殺された)息子のまなざし」だとしたら、なかなかヤバいものがあると。もっとも、それは一方的な「解釈>>続きを読む
続くと思っていたものが、断ち切られてしまうこと。それが、この『ロゼッタ』という映画に通底する力学である。映画のリアリティーのなさ問題の一つに、「ドアを開けて前に進む人物が(後ろからカメラが付いてくるの>>続きを読む
『ロゼッタ』くらい見なくちゃなー、と思っていたけど、えーい、めんどくせえ、大した数じゃないし全部見ちゃうよダルデンヌ兄弟プロジェクト、その1。
遡れる限りの初期作である本作は、誰しもが思う事だろうが>>続きを読む
これ観てないとモグリな、ネオレアリズモ初期の代表作。続く『自転車泥棒』や、ロッセリーニの『ドイツ零年』に比べると考え込まれた「物語」という感が強いが、「誰も悪くない筈なのに」という引っ掛かりを伴う転落>>続きを読む
レイチェル・マクアダムス(!)の婚約者にして、こじれが抜けきらない中年インディー男子がパリで時空迷子になるというどうでもいいお話。1920年代の世界でマリオン・コティヤール(!)の演ずる娼婦のような女>>続きを読む
「法律なんか守ってたら国家を守れない」というCIAに対し、弁護士が語るもの。この作品にメッセージなるものが含まれているなら、これがそうだろう。法学部の青二才がほざくような「国家」とその理想や精神の法的>>続きを読む
日常風景のほんの小さな亀裂から異世界へと迷い込み、新たな名前を与えられ、子供が大人になっていく・・・・という、まさに『千と千尋の神隠し』的導入でスタート。で、いかにもシネフィル的な自意識というか、現代>>続きを読む
コーエン・ブラザーズのキャリア最低とも言われる本作だが、本国では『ノーカントリー』ばりにヒットしているようだし、普通に面白かった。副題をつけるとすれば、「間違えられた男」という感じでしょうか。そう、こ>>続きを読む
エンドロールを見るまで知らなかったのだが、この映画の仮面男・フランクは、実在のコメディアン/ミュージシャンをモデルにしている。
しかし、その仮面はそうした「引用」の意味を超えて効いている。『シェフ』>>続きを読む
死ぬほどつまらない。時々、照明(というか、自然光?)の入れ方が美しいと思うくらい。それでも、それは小計でせいぜい30秒くらいのカットだ。もっとも、劇中で使われるVUをはじめ、3分そこらのロック・ミュー>>続きを読む
コーエン・ブラザーズ、初期の代表作を今さら。これで10作目の鑑賞となりました。批評によってはキャリアハイに挙げられる最高傑作の一つでもある『赤ちゃん泥棒』。家庭志向の強い女警官と、スーパーマーケット専>>続きを読む
『ズートピア』の後夜祭として、同作共同監督のお一人、バイロン・ハワードの代表作を今さら。とは言えこれも共同監督作であるし、凄まじい分業体制なのであろうディズニー映画を作家単位でどうのこうの言うのが適切>>続きを読む
こっちもすげー。「ゲイジュツ家は大衆の身代わりとして私生活を全て犠牲にし、深い苦悩の底から何かをひっつかんで戻り、高みを目指すべきもの」という古典的な浪漫主義ぶっちぎりの男が、たった一人の、どこにでも>>続きを読む
新作公開記念として、コーエン・ブラザーズの代表作を今さら。これは多分、コメディなのだろう。薄っすらした笑いだけども、ハードボイルドへのシニカルな没入とハズし加減が絶妙。しかも、そのシニカルさがいやらし>>続きを読む
序盤の、街中での攻防はすごく良かった。特にスカヨハ周りの肉弾戦と追走劇はそれだけで売りにできるほど高クオリティ。すでに見飽きた感のあるワンパターンな攻防にアクセントを加えるスパイダーマンもすごく良かっ>>続きを読む
一応、新作前に観ておこうかなと。単純に面白いポップ・ムービーではあるのだけど、さすがに子供騙しというか、善良なヒーローの大いなる自己犠牲とか、テンプレ的なものを乗り越えるよう、何かを徹底してこだわり抜>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
正当な任務の中での正当防衛のための射殺ですら、規定違反ではなかったかと何度も自己評価を怠らないようなFBIの女性エリート(というより、優等生)が、その熱血的な現場主義や、家庭や身だしなみをかえりみない>>続きを読む
うーむ。「大作」であることには違いない。けれども、360度自由自在に動き回り、常に「そこ」にい続ける完全映画的なカメラワークは、それ故にベッタリと説明的で、映画的な呼吸を失ってしまっているように思えた>>続きを読む
うーむ。めちゃくちゃ感動したし、めちゃくちゃ泣いたのは事実。見終わった直後はヤバい!年間ベスト級の大傑作!!という思いすらしたものの、いま改めて考えると果たして自分は何に感動したのか?という思いも募る>>続きを読む
素晴らしい!「差別」を主題にしつつも、ここまでファンシーでバブルガムなポップ・ムービーに仕上げてくるなんて! ミステリー、サスペンス、そしてほんのりラブコメディ。長くなりそうだったのでブログに書きまし>>続きを読む
いわゆる「マスゴミ」問題のみならず、「バカッター」「アホスタグラム」がすっかり普及した現代、ここに描かれているような倫理の問題は誰にとっても他人事ではない。例えば、ちょっと前に新宿の大通りで人が焼身自>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
これはドチャクソ面白かった!!
まず、最初の女性客との何気ない会話のセンス。より近い道順について軽い口論になりかけたのを、「賭けてみる?」と切り返す瞬間の見事さ。少しだけ親密な空気が流れる車内を離れ>>続きを読む
マスメディアと、社会と、大衆の欲望と。言うほどつまらなくはなかった。後続への影響があるかはともかく、擬似ドキュメンタリーの手法が前面に出ており、悪党の描写からすれば、『ダークナイト』的な楽しみ方をして>>続きを読む
http://cinemaguide.hatenablog.com/entry/lobster
これは・・・・・かなり「喰らう」作品だ。この『ロブスター』なる映画で、人は「一人で生きること」を許さ>>続きを読む
『リアル鬼ごっこ』で書いた事がほとんどそのまま使える題材なので、やはり、ふざけ散らかしているように思えて園監督なりに何かしらの一貫性を持ってるのだと思う。かなり、出がらし感は強いが。
にしても、「公>>続きを読む
ひとまず言えそうなのは、これは「アクションの」映画である、ということである。もちろんこれは、映画の定義からすれば単なるトートロジーに過ぎないのだが、それが今の時代に少しでも新鮮さを放ってしまうとすれば>>続きを読む
酒、タバコ、ギャンブルにドラッグ、そしてお得意の女遊び....自らを生粋のカウボーイと名乗るこのセルフィッシュなロデオは、避妊を省いた性行為でHIVウイルスに感染し、余命30日と宣告された後をどのよう>>続きを読む
映画は残酷である。どれほどシリアスで社会的な題材を携えて、どれほど真摯なモンタージュでそれを映像化したところで、映画が、あるいはカメラを向けられた被写体や風景が微笑んでくれるとは限らないのだから。面白>>続きを読む
まず、『砂漠の流れ者』などといういかにも西部劇風の邦題が決定的に間違っていて、なぜならこれは、荒野を疾走するヒップな流れ者ではなく、極めて反西部劇的な「定住者」の物語なのだから。その意味では反ヒップ的>>続きを読む
60年代という、西部劇が、あるいは映画が終わった時代に西部劇でデビューしなければならなかったペキンパーという不条理にまたもやグッタリ。「こんなはずじゃなかった」というのが、ペキンパー映画の端的なキーワ>>続きを読む
「カート・コバーンが来ていた、あのTシャツの人」と言えば、どれほど音楽に興味がない人でもぴんと来るだろう。あるいは、80年代後半以降から今日までの、アメリカのポップ・ミュージックを愛する人であれば、お>>続きを読む
気付けば、映画を観るという行為自体がほぼ1か月ぶり。『キャロル』をもう一度見よう、寝落ちした『ヘイトフル・エイト』のリベンジをしよう、まあ、そのうちね、などと悠長に思っていたら、ここまで来てしまいまし>>続きを読む
音楽のセンスが20年以上も前の、自分の青春時代で止まったままのダサい母。大学教育を受けておらず、飲んだくれのダサい夫と結婚した無教養な母。それでも自分たち子供を愛し、自分なりの哲学で幸せに生きようとし>>続きを読む
凄まじい「徒労」の表現。自分が何を求め、何に縛られ、どこに向かっているのかも分からず、ひたすら追っ手から逃げ、その時々の利害関係を周到に読んで、どこの誰かも分からんような奴らと一時的な協定を結んだり、>>続きを読む
こちらも『ローリング・ストーン』絡みの一作。『ビフォア・サンライズ』スタイルと呼んでいいのか、「作家へのインタビュー」という体裁で、たった二人の人間による会話劇という設定を成り立たせ、「発刊ツアーへの>>続きを読む