ワンコさんの映画レビュー・感想・評価 - 56ページ目

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.5

【英国には悲劇がお似合い】

英国には悲劇がお似合いだ。
少し不謹慎な気もするが、シェークスピアばりの、この悲劇の物語を観ると、やっぱり!と思ってしまう。
イギリスのすごいところは、こうした王室の悲劇
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ナチス第三の男(2017年製作の映画)

4.2

この物語の後に始まる最大の悲劇
この一連の事件の後、ユダヤ人の絶滅収容所送りが始まる。
女性問題で失脚し婚約者の前でメソメソ泣いていた男が、類まれな管理能力と諜報力を背景に、上昇志向と怨嗟でナチスの上
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21世紀の女の子(2018年製作の映画)

4.1

抱える揺らぎや、ざわめき
「21世紀」は、僕達が若かった頃より、ちょっと複雑だ。
LGBTQや外国文化など多様性の理解が当たり前のように求められたり、女性の社会進出が課題として語られたり、これにSNS
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洗骨(2018年製作の映画)

4.5

再生のものがたり
「あの世なんて、そんなとこだ!」
この世とあの世の境目を通る時に、おばぁが言う。
亡くなった人を思い出すより、形式的なことを優先する自分に少し違和感を感じてしまう。
この島では、あの
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ファースト・マン(2018年製作の映画)

4.5

突き動かすもの
ニールを突き動かすもの、それは、家族のもとに生還するという、生への執着、信念だ。
冒頭のシーン、ジェミニ計画のドッキング後のアクシデント、多くの友人が亡くなった後のテスト飛行…、国家の
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赤い雪 Red Snow(2019年製作の映画)

4.5

朱色の意味するもの
春など想像すらできない冬の曇天と、閉ざされた空間。
決して知られてはならない秘密。
繰り返される狂気。
重苦しさを閉じ込めた島は、人を救いようのない運命に導くのか。
きっと漆の朱色
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バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

5.0

消えること。ミカンと、ハウスと、ヘミと
この物語自体が実は、パントマイムだ。
もともと存在しないものが、存在に対する逆説的なメタファーとなり、そして、巧妙に仕掛けられたトリックがミステリアスさを増し、
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家へ帰ろう(2017年製作の映画)

4.8

約束と邂逅の旅
アブラハムは、どんな青の、どんなデザインのスーツを仕立てていたのだろう。

でも、なぜ、70年もの長い年月が必要だったのだろうか。
頭から恐怖が離れなかったのだろうか。
いや、きっと、
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二階堂家物語(2019年製作の映画)

4.3

切ないけど…滑稽
程度の差こそあれ、こうした家柄とか、古い因習に縛られている家は沢山あるような気がする。
そして、男の子が生まれないとか、婿が来ないとか、その「先祖代々」は、ある日突然問題に直面する。
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バハールの涙(2018年製作の映画)

4.5

【中東の抱える様々な問題】

アフリカもそうだが、中東の国境には直線が多い。

当時の欧州強国やロシアが、オスマン帝国を攻撃し、石油利権を求めて、民族や部族、集落、宗派などに関係なく、傀儡政権をベース
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夜明け(2019年製作の映画)

4.1

戻る場所
夜明けに自ら命を断とうとし、そして、夜明けに生きて行こうと決心をする。
人は、深く傷つき、深く傷つけた場所に一度は戻らないと、本当の意味で、一歩を踏み出せないのかもしれない。
どんな葛藤があ
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ミスター・ガラス(2019年製作の映画)

4.5

ヒーローのいる場所
完全無欠なヒーローなんていない。
弱点がある。
大切な人も弱みになる。
なかなか成し遂げようとしてることが理解されない孤独も付きまとう。
悪もヒーローも無きものにして、世界に均衡を
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チワワちゃん(2018年製作の映画)

4.5

自分が何者かだった時代
自分が何者かだった時、自分の感性が全てで、ルールだった。
武勇伝を大袈裟に語り、飲み交わした。
騒いだ。
キスをした。
セックスもした。
楽しかった。
悩みも打ち明けた。
でも
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それだけが、僕の世界(2018年製作の映画)

4.5

それぞれの大切なもの
人間関係が丁寧に描かれている寡作。
ジンテを取り巻く人たちが、それぞれの何か大切なものを取り戻していく。
母親と向き合い、父親と対峙するジョハ。
ジョハは、母親を許し、ジンテの支
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蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)

4.2

アクション映画として楽しみたい
ミレニアムシリーズの、蜘蛛の巣を払う女は、前3作とガラッとストーリーの趣が変わるので、アクション場面が多くてなっても良いのかなと思いつつ、これまでの鬱屈とした、暗く淀ん
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海を駆ける(2018年製作の映画)

3.8

魂の物語
これは、彷徨う魂の物語だと思う。
ラウが何者かというより、それぞれの魂が行き着く先を求めているのだと。
生きているとか、すでに亡くなっているとかを問わず、何かを求めて彷徨う魂の。
はるばる日
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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年製作の映画)

4.2

それぞれの成長の物語
鹿野が傍若無人過ぎて、マジかと思って不愉快になったり、笑ったりしたが、人工呼吸器をつけた後の発声や、なんと言っても、皆の前で、美咲にフラれたのに、田中くんと美咲の間を取り持とうと
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ヘル・フロント 地獄の最前線(2017年製作の映画)

4.0

戦争とは何か
この作品には戦争の大義は描かれない。
祖国のため。
民主主義のため。
こうしたものは描かれず、塹壕の中の兵士達の数日間の緊迫感や絶望に近い焦燥感と、そして結末を通して、逆に戦争とは何かと
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アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)

4.5

とことん掘り下げないと…
自分をとことん掘り下げないと、良い作品は生まれない。そうじゃないと、人は離れて行く。
ジャックがアリーに投げかける言葉だ。
これは、アリーの物語であると同時に、ジャックの物語
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モリのいる場所(2018年製作の映画)

4.0

無一物
田舎育ちなので、子供の頃は、地面との自分の視線の距離も近くて、蟻もカエルもオタマジャクシも、イナゴもバッタもカマキリも、イモリもヤモリもトカゲも、ヘビも、みんな視界の中にあった。
でも、いつの
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宵闇真珠(2017年製作の映画)

4.2

カケラ
記憶は、時に、曖昧で拙い。
断片はクリアでも、のりしろがどんなだったかは、思い出せない。
薄く靄がかかったようでもある。
白い少女。異邦人。少年。取り巻く人々。母親の幻影。父親。
孤独だった。
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青の帰り道(2018年製作の映画)

4.2

そこにいる自分が自分であるということ
夢は何か?
夢を追いかけているか?
自分は何者か?
何故ここに、この時に生まれたのか?
一体どうしたら、ここから、そして、今から抜け出せるのか?
様々な思いが駆け
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ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.0

家族という閉ざされた社会
家族は社会の縮図だ。
そして、あるのは愛情だけではない。
血縁は、何よりも優先して語られるルールのようなものであり、様々な因習が周りから評価されることもなく続き、支配や愛憎も
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ジョニーは行方不明/台北暮色(2017年製作の映画)

4.0

立ち止まること
シューを中心に台北で生活する人々や家族の物語の断片が語られる。
悲しみや、トラウマ、家族の不和。
ただ、皆どこかで繋がっていて、決して、孤独ではないように思える。
シューに、ジョーを求
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斬、(2018年製作の映画)

4.0

斬る理由
静寂も、そして怒号も斬り裂く甲高い金属音が、頭の中に波打って消えない。
人を斬る理由とは何か。
生きるため、家族のため、大義のため、そして、自分自身が生き残るため。
しかし、斬った後に残るの
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アウト&アウト(2018年製作の映画)

4.0

ハードボイルド
リラックして観られるハードボイルドでした。
こういうハードボイルド作品は年々少なくなってて、ちょっと寂しかったので、楽しく観させてもらいました。
物語の背景設定を少しおっきくし過ぎとか
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(2018年製作の映画)

4.5

曖昧な線引き
僕たちは常に曖昧な線引きのエッジの上に立っている。
こんなやつ、殺しちゃえ。
こいつとやりたい。
こいつは、大切にしてやりたい。
大なり小なり、誰もが心の中に抑え込んでいる衝動だ。だが、
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鈴木家の嘘(2018年製作の映画)

4.1

それぞれの向かい合い方
ずっと心の底に押し殺してきた想いや感情。
率直に悲しみを表現できない自分。
どうして…?、自分のせいなの…?と投げかけても、決して答えの見つからない問い。
ただ、一人一人がそれ
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アジア三面鏡2018:JOURNEY(2018年製作の映画)

4.0

おんなじということ
国際化が進んで、多様性や多様な文化を理解することが重要視されるようになった。
そして、僕たちの世界は、さまざまなひずみも抱えるようになっている。
でも、この映画を観ると、どの国でも
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生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)

4.5

代償を求めない愛
自分を好きになれなかったら、人のことなんて好きになれるはずがないよ、って、言われたことがあった。
あなたは、私がきらいになったら別れられるけど、私は私が嫌いでも別れられない。
手を差
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ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

4.5

We Are the Champions!
なかなかうまい表現が見つからない。
それほど、Queenは、本当に凄かった。
駆け抜けて行った。
迫力のあるQueen の曲を聴くには、ウォークマンが必須だ
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バグダッド・スキャンダル(2018年製作の映画)

4.0

中東の人々の命の軽さ
人種や民族で人の命に重いも軽いもあるはずがない。
このスキャンダル発覚後、国連改革も進み、こうした国連援助絡みの大きな事件は起こっていないし、国連の大半の職員は、昔も今も善良で、
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⼗年 Ten Years Japan(2018年製作の映画)

4.5

僕たちの未来
「十年」……後、たとえ、映画の物語のような世界が待っているとしても、きっと変わらないものがある。
家族を思う気持ち。子供の無鉄砲とも思える勇気、無垢な優しさ。好奇心や希望、想像力、探究心
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華氏 119(2018年製作の映画)

4.5

彷徨うアメリカ
振り子は片方にだけ大きく振れるのではない。
アメリカの政治はずっと振り子のように振れ続けてきた。
しかし、国民皆保険を掲げたオバマへの期待値が高かった分、その反動は大きかった。
また、
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ヴェノム(2018年製作の映画)

4.3

【イラっとするキャラだけど…】

マーベル・ヒーローは、大概どこかに欠点があって、「そういう奴いるいる!」みたいな気持ちになる。

金持ちだけど傲慢で独りよがりとか、ひ弱な学生とか、協調性が過ぎて足元
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(2017年製作の映画)

4.2

向き合う
「さあ、これから」と周りの人間が思ってるだけで、絶望の縁に立っている人もいる。もうダメと分かっていても、命を繋ぎとめようとする人もいる。
そんな医療の現場で、医者ではなく、リバビリを手助けす
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