まるでキリストの起こす奇蹟を目の当たりにしたような、途方もない神秘と邂逅したような、ある種の敬虔さともいえるだろうか。畏怖であり、驚嘆であり、心を震わせるような、、そんな様を今！まさに今！この目で！間近に観ている。ポールを追っていく中で、民衆の1人として、そう思う気持ちと、映画全体からそれを感じる気持ちと混ざり合ってもうとんでもないものを観ているのではないかと思った。この作品はあまりにもドゥニの作風と合いすぎている。ドゥニは精神のゆらぎを掬いとる。時間や、間合いや、画角や、俳優の演技を通して。だからこそ、ドキュメンタリーにならず、観客もその瞬間を生きることができる。そこには単純なリアリティだけではない、生の脈動が生まれる。映画を観ている気持ちと映画に入り込み、体験している気持ちがリンクする。映像体験なんて生易しいものではない、本当に私は救世主ムアティブを現実に観ているのだと思った。すごい映画だ。。
