Kinako

デューン 砂の惑星PART2のKinakoのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.7
 『スター・ウォーズ』や『風の谷のナウシカ』など、数々のエンタメに影響を与えた約60年前のSF小説が現代で社会現象を巻き起こす!全宇宙から命を狙われるプリンスと砂漠の民・チャニの復讐戦が幕を開ける。まるで幻想をみている様な映画体験。

 2021年に公開された『DUNE/デューン 砂の惑星』は、圧倒的な映像美と壮大すぎる世界観が話題となり、第94回アカデミー賞では視覚効果賞をはじめ6部門で受賞しました。これはこの年のアカデミー賞で最多記録です。

 その続編が『DUNE/デューン 砂の惑星 PART2』です。本作は『ゴッドファーザー PART II』や『ターミネーター2』に並ぶ、「最高の続編映画」として語り継がれる一本になると思います。前作の良さを保持しつつ、新たな切り口でパワーアップさせるのが続編としての無難な成功法則です。それが本作にも活かされています。

 多くの場合、「独特の世界観」や「未知の風習」が描かれた原作をそのまま実写化した作品は、ファンや映画マニアには好評を得られるかもしれませんが、作品のアート性が強調されるあまり、大衆向けのエンタメ作品にはならないといったリスクがあります。

 そういった事例がある中、2021年から続く『DUNE/デューン 砂の惑星』シリーズは、「ヤバいものを観に来てしまった」と鑑賞中に思わされる程、原作の独特な世界観が見事に再現されています。このようなアート性の高い映画が記録的に大ヒットしている理由は、原作の知名度以外にも、作品の中に「既知性」があるからだと考えられます。

 原作が数々の作品に影響を与えてきたSFの元祖というだけあって、なんか見た事あるなぁと思わされる「既知性」が随所に見られます。例えば、主人公と宿敵の対立構図、砂の惑星に棲むサンドワームとの交流、様々な戦闘機やガジェットなど。

 今となっては使い古された王道のSF設定がそのまま再現されていますが、全く古臭く感じません。むしろエンタメ文化が栄えた現代だからこそ、「未知の風習」や「砂漠の世界観」といった独自性と、誰もが知る王道が合わさった作風が「新しさ」として受け入れられているのだと思います。これが本作がヒットした大きな要因といえます。

 「砂の惑星」についても、壮大で美しい風景と過酷な自然環境という、二つの側面が描写されており、『風の谷のナウシカ』に登場する腐海を想起させます。朝起きたら忘れている、悪夢だけど何故か思い出したくなる不思議な夢をフィルムに焼き付けたかの様な「幻想的なディストピア」がスクリーンに広がっています。

 砂の惑星の壮大な世界観は、前作でも描かれていましたが、『DUNE/デューン 砂の惑星』の真価は、本作PART2で分かると思います。主人公の悲劇に焦点が当てられた前作は、謂わば本作の壮大なプロローグです。前作の宣伝文句にあった「スペクタクル・アドベンチャー」の要素は、本作でようやく発揮されます。

 大きな盛り上がりを見せる事なく終わった前作とは違い、今回は、父親を殺害された上に全宇宙から狙われる身となったポールの復讐劇となっています。後半からの怒涛のスペクタクルに向けて、冒頭から丁寧に物語が積み重ねられているので、どのシーンも見逃してはいけません。

 そして前作で無垢なプリンスだったポールは、戦火を潜る中で、徐々に大人びた雰囲気の青年になっていきます。「敵の殺害=主人公の成長」とする作品は好きではありませんが、ポールを演じるティモシー・シャラメの勇ましい演技は新鮮味があり、圧倒されました。いつも清涼感漂うキャラクターを演じていましたから。

 また、ポールが砂漠の先住民・フレメンの力を借りる為、フレメンの一人であるチャニから砂漠で生きる術を学び、彼らの信頼を得ていく過程は、『アバター』で主人公がナヴィ族に溶け込むシーンを想起させます。戦士としての成長、フレメンとしての成長、二つの主人公の成長をチャニとの恋愛を通して描かれます。

 家を追われたプリンスと砂漠の先住民のラブロマンスが砂の惑星の美しさによって幻想的に際立っています。SF映画の金字塔『スター・ウォーズ』の物語が幕を閉じた今、(続編の噂はあります)その元祖たる壮大なスペース・アドベンチャー「デューン」をぜひ目に焼き付けて没頭していただきたい。
 

 
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