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デューン 砂の惑星PART2のTenKasSのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
5.0
原作から引き算するだけして大まかなストーリーラインをなぞってるだけにしか見えず出し惜しみと引き伸ばしという印象だった一作目からは考えられないほどの世界の広がりと、原作に対する再解釈が炸裂していた!
ヴィルヌーヴがメランジで覚醒したのではないかと思ったほど良かった!完璧な「DUNE Remodel」。

スターウォーズがファンコンテンツ化したことでもうほとんど出来なくなった預言者や英雄への再解釈、つまり神話や物語という人類にとって必要不可欠なものに対して新たに視野を拡げるということ(しかもそれを今一番魅力的なティモシー・シャラメでやる!)と、架空の生活を綿密に描くことで別世界を実世界と通じるものとして知覚させるということが、完全な形で両立されていた。しかもスターウォーズでは背景として留まっていた民衆がしっかりと描かれている。救世主と信仰、そして民衆を捉えた画面はIMAXと融合してもはや宗教画的な様相を呈している。他ではあり得ない映像経験をもたらす。

フランク・ハーバートはポール・アトレイデスという英雄に対する捉え直しを2作目でやるが、既にそれが始まっている。本を読むことと映画を観ることの観客の視点の差異をうまく利用しているように思った。
原作の一作目は熱狂的な英雄と狂信者が誕生することをほとんど異化しないが、映画には切り返しがあるためにその現象への異化がチャニの視線を通じて行われる。
全体的に女性キャラクターの扱いが見直されていて、それが単なる「正しさ」の為でなく、物語的必然性をもっていて素晴らしかった。権力の為のトロフィーワイフで、ベネゲセリットとしても原作では大したことなかった(映画では優秀な生徒だと言われている)イルーランをフローレンス・ピューが演じることが含蓄するところは特に凄い。今後の展開の再解釈に絶対影響してくるだろう。
他にもフェンリング伯爵夫妻は妻だけになってレア・セドゥがやってるし、なんか物凄いサブプロットが追加されていたし、
ウスールにあてがわれる戦利品のフレメンはいなくなってるし、そもそもアリア生まれなかったし、チャニは北フレメンで原理的教義に懐疑的ってことになっている。この北フレメンと南フレメンに原理派かそうでないかという差異を明確に設けて話に絡めたのも賢い。そういえば一作目でリエトが女性に置き換えられていたけれど、チャニとの関係性は特に何も明かされなかった。3作目に何かあるのだろうか?

ハヤカワがこの映画のおかげでとりあえず最初の三部作復刊してくれましたありがと〜くらいの感想しかないだろうと本気で思ってたから、良い意味で完全に裏切られて本当に良かった。未だに信じられん…
スターウォーズでいえば『シスの復讐』の『砂漠の救世主』マジで楽しみです。(戦争が始まって終わる『クローンの攻撃』は「デューン」を引用していたということに今更気づく。)←逆か?

2回目グランドシネマサンシャインIMAX

1.43:1の画郭は、物語上の主にポールとジェシカにとって重要な場面で使われている印象でナラティブに沿う形。他にはエピックな画面に使われているが少々変更が多く普通のIMAXの時の方が夢中になれた。
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