ぐりんでる

イニシェリン島の精霊のぐりんでるのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.5
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突如絶好を宣言するおじさんと何のことやらさっぱりで付き纏い続けるおじさん
絶好おじさんvs執着おじさんの世紀の大バトル
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最初は絶好されたおじさん可哀想…って思ったが、去る者追う様がしつこすぎて今度は絶好したおじさんを気の毒に思った。が、絶好おじさんが常軌を逸した行動に出てぎょっとした。
それでもなお執着おじさんは付き纏い続け、絶好おじさんは常軌を逸し続ける😝

基本的におじさん同士が小競り合いをしてるだけの変な映画だけど面白かった
気まずい空気、不穏さを煽る緊張感やわりとハラハラする展開。
おまけに絶好する以前の親友だったらしい時期の事が一切描かれないので、どちらにも感情移入に足る材料が薄く自分の価値観や経験則を当てはめる余地がありすぎる。

いきなり「お前とはもう話さないから話かけるな」と距離をとるのはどうかと思うが、この絶好おじさんの気持ちは分からんでもない。
気持ちはわかる上ですごい拒絶ぶり。河岸を変えないからあてつけみたいだし、やんわり社交辞令で距離置くんじゃダメだったのかwそれじゃあ通じないアホではありそうだが。

そのアホの執着おじさんはもうやめときなよ。としか言いようがないアホ。こういう人いるわ。自分をわかってないから人との距離感を見誤ってる感じ、シンプルにストーカー。
と言っても実際の能力素質以上に自分を過大評価してるあたり、自分もそんな節があるのかもとゾッとするものがあった…

またもう一人のアホを演じたバリガン。憎めないアホだけど実は思慮深いんじゃないかと見せかけてしっかり読み誤り事態を煽っちゃってるのが面白かった。バリガンってやっぱり目を引く!

大義のためと切り捨てた関係、結局本来守るべきものすらも失いながら対立の溝を深めていく本末転倒さは様々な争いの縮図のようだし、そもそも身近でありふれた人間関係みたい。

まぁとにかく主要登場人物にとどまらず他責というか人にあれこれ求め押し付ける不健全な思考回路の奴ばっかり!あの小売店?郵便窓口のババアも然り、人に求めすぎだろ。ババアお前も劇中面白い話一つもしてなかったからな。執着おじさんは眉毛が困りすぎてて少なくともお前よりは面白かった。警官のおやじは終わってる

こんな澱みまくりの閉鎖的なコミュニティに対して、なんて解放的な景色。
その中でも唯一人間ができてたのは執着おじさんの妹。そして可愛かったのは犬とロバ。
みんなそれぞれあるだろうが自分や人生を変えたいならこの妹みたく他所行きゃいいじゃん。これに尽きる。その判断と決断も簡単じゃないから厄介なんだけどな

何度か、対岸の火事のように向こう岸の内戦を眺めてるが、規模は違えど自分たちも同じことをしてる事、しかねない事に気づかない作中の滑稽な人物たち。

そんな人たちをスクリーン越しに観てこれは戦争のメタファーだ。と他人事、対岸の火事として処理する自分も本質的には島民と同じなんだろうし

もはや、面白いだのつまんないだの映画という名の人の話を人生の余興とし、おじさんたちの争いに見応えを見出してる自分は、あのババアのポジションなのかも😨それは少し皮肉がすぎるかw

それでも面白い、人の喧嘩。映画も単純に面白いし自分の人生のつまらなさを人のせいにするもんじゃないなぁ。などの啓発的なメッセージを感じたいい映画

行動は極端でもどの人物にも共感できてしまう部分があって俺、私、ぼくちん、あたちこそがイニシェリン島の精霊だー!となること不可避のこの冬一番のバトル映画。