ぐりんでる

ニューオーダーのぐりんでるのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
4.0
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華やかな結婚パーティが開かれる豪邸。上流階級の著名なゲストが列席する中かつての使用人が援助を求め訪ねてくる。
一方、街では貧富の格差に喘ぐ人々が暴徒と化し、ついには結婚パーティ会場へと侵攻を始める
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裸のねぇちゃん、階段を流れる液体、変な色の木、ブロッコリーの表面みたいの。不穏な緑テーマのカットが連続する冒頭が意味深!なお意味は不明。
タイトルとジャケットの印象ではSFの類かと思ったんだけど(色味がマトリックスみたいだから)、蛇口から一瞬だけメロンソーダみたいのが出てくる以外にファンタジーという名のオブラートは無し。この春一番にとびっきりの現実にありそうな胸糞。

全体的にBGMが無いし劇的な描写も控えめでどことなく人物とカメラはドキュメンタリーの距離感。なので絵的にはあまりドラマチックじゃないがそれがかえって生々しい

物語自体はドラマがあり、パーティの中に垣間見える人種や貧富の格差、不穏な空気を経てそれまで当たり前にあった日常があっという間に瓦解していく様などかなり嫌な感じのスリルがあり見応えありまくり。

とくにきついのは主人公マリアンの辿る道。よりにもよっていい人なマリアン。これが娯楽作品であれば積んだ徳に応じて大なり小なりの救いがある。そしてそのセオリーに則って救いあれよ。善行フラグは回収されてくれよ!🤢

でも最後まで見て今作は個人の人生のクライマックスを切り取った小さな物語ではないと理解した。
賄賂やご祝儀、治療費、身代金、格差社会等々歪でフェアじゃないにしても金の巡りで解決できそうな問題が提示されつつも何段階にもわたって金でもどうにもならない地獄が展開されていく。地獄の沙汰も金次第というが、それは最低限の秩序が機能した倫理の内側の話。その外側には際限のない欲望渦巻きまくり。

広がる格差は分断を生んでその果てに社会的な憤怒が臨界点に達したらこうなっちゃうよ。という行き着く先の話にも見える一方、
「新たな秩序」を敷く側の目線でいくとぶっ壊れた世紀末みたいな世界は整地するにはもってこいでその対処も、とりあえず膿出し切ったから拭き取りましょうか。という淡白なテンション感。まるで格差の延長にある暴動もプログラムの一部として織り込み済みかのような、支配の一つのフローみたいだった

SFどころか人間ドラマかどうかも際どく人情もクソもない。マリアンや使用人親子に焦点を当ててみるから辛いけど、壊されては上書きされを繰り返してきた歴史、組織された暴力の独占こそが国家の本質ということです。

だが人々が結束していれば支配するのは容易ではない。もっと手前の問題はあると思うけどケチらないで親身に治療費を援助するような、そんな関係が当たり前な世界であれば壊れることはなかったかもしれない。
堰き止めるから誰かが困り、隔てるから奪い合いになる。何もいいことない。だからみんな仲良くちよね