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イニシェリン島の精霊のparkoldiesのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.9
何か久々に後味の悪い、胸糞悪い映画を観たような気分。(褒めてます笑)
この感じは『ジョーカー』以来だなと感じました。
「突然」そして「自傷」この二つがこの映画の印象。友人関係(に限らず人間の関係なのかもしれないが)は徐々に疎遠になるわけじゃなく、突然終わりが訪れる。「いい人」が突然憎しみに駆られる。徐々にではなく、突然。それは滑稽にも映るが、そこが恐ろしく、リアルに感じられる。狂わなければ出来ないような所業の数々。自分は狂っていない、狂っているのを装っているだけだと思っていたのが、本当に狂わざるを得なくなる。そこの怖さ、そんな人間の醜い部分、微妙な心の動きを描くのがマクドナーは本当に上手いと思う。
また滑稽なのは、コルムが自傷に走ること。「これ以上俺に関わったら、お前を殺す」ではなく、「俺の指を切り落とす」その自傷は側から見ると非常に滑稽なのだが、大抵の人間はおそらく他人を傷つけることに抵抗を覚える。だが、他人を傷つけずに他人を傷つけるためには自分が傷つくしかない。そんなリアルな人間の有り様が、痛いほど生々しく描かれた作品。
個人的には『スリービルボード』の方が見やすく感じたので、少し残念だったが、コリン・ファレルの演技は凄まじい。主演男優賞は文句なしのノミネートでしょう。
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