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炎のランナーのparkoldiesのレビュー・感想・評価

炎のランナー(1981年製作の映画)
3.8
我が父最愛の映画。
1924年のパリ五輪を舞台に民族の誇りを胸に走るH・エイブラハムスと神の栄光を表すために走るE・リデルの二人のランナーを描く。
原題の"Chariot"はランナーではなく、聖書の一節"Chariot of Fire"から取られた「戦車」を意味する単語。意訳だが秀逸な邦題だと思う。

全編にキリスト教的な価値観が見受けられる本作。民族の威信のために走ったエイブラハムスは金メダルに輝くものの、その顔は暗い。そして400メートルに急遽鞍替えしたリデルは見事金メダルを勝ち取る。その顔には生気がみなぎり、勝利を噛み締めた顔をしている。そして、リデルが走る姿をエイブラハムスは何か呆気に取られたように見つめる。
皆誰かのために走っているし、それが母のためであろうと、また民族のためであろうと、そして神のためであろうと、その想いは変わらない。しかし全てを包括するような神のために走るリデルをこの映画は称賛しているように見える。走ることによって何かを捧げて、そして何者かに変わる。エイブラハムスは民族の為に走るが、それは自らが英国人であると認められる為、ユダヤ人から英国人に変わる為のレースでもある。しかしリデルはひたすら神のために走る。「私が走る時、神を感じて喜ばしい気持ちになる」そうリデルが言ったように、神のために走ることは神を感じることであり、自らの才能(タラント)を無駄にすることなく、全てを発揮することであり、何者にも変わることがなく、自らを曝け出して走ることなのである。こういうキリスト教的な価値観が存分に張り巡らされた作品だったような気がする。
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