Omizu

南部の人のOmizuのレビュー・感想・評価

南部の人(1945年製作の映画)
4.5
【第18回アカデミー賞 監督賞他全3部門ノミネート】
フランスのジャン・ルノワール監督のアメリカ映画。ヴェネツィア映画祭で一応最高賞をとっているが、この頃のヴェネツィア映画祭は正式に認められていなかったため第0回と言われている。アカデミー賞では監督賞、音楽賞、録音賞にノミネートされた。

傑作。ルノワールが戦火のフランスから逃れ、アメリカで撮った作品だが、見事な手腕は健在。農夫の厳しい生活を描きながらも、非常に暖かい人間ドラマになっている。

日雇い労働者として働いていたサムは土地を買い、綿花農業を始めようとするが・・・

意地悪な隣人、枯れた土地、崩れそうな家という厳しい状況ながら、それでも希望を見出そうとする暖かみに満ちている。

サムがとても人間らしい。希望を持ってはいるけど楽観的というわけでもない。人並みに悩む姿に共感。彼を支えるノーナもいい。

一番面白いのは祖母。いつも小言や不満ばかり言っているが、結局孫に踊らされちゃう描写はユーモアがある。厳しい現実とユーモアの塩梅が丁度いい。

農夫を描いた作品だが、工場など他者を否定しないスタンスもいい。僕がやっていることもいい、君がやっていることもいい。そんなスタンスが心地よい。

さすがルノワールという傑作だった。これだけの内容で90分というのも素晴らしい。アメリカ南部の厳しい状況、一人の夫婦の一代記としてよく描いてる。とても素晴らしい作品だった。
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