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ノースマン 導かれし復讐者のFrapentaのレビュー・感想・評価

4.2
今回もしっかりロバートエガース作品。
いいぞもっとやれ。

今作が持つ過去作との明確な差異はスケールだ。これまで位置的に定点止まりであったのに対し、ノースマンは行動範囲がかなり広く、雄大な自然美を有する北欧を舞台に主人公が復讐のために駆け巡る。
一見作風が変わってしまって魅力半減……かと思いきや、しっかりロバートエガースで安心した。相変わらず本格的な時代考証が土台となって作品が作られているのだと感じる。下地があるからこその重厚さに眼福。

そして彼の作品ではお馴染みのクローズアップショットは今回も健在。ゴシックホラーだった過去2作品に比べ今作は最多だったかも。
キューブリック作品とか観ると分かる通りクローズアップは心情を覗き見る効果があってかなり相性がいいのだが、アクション大作でも惜しみなく使っていて味がある。ただ行動を観察するだけに留まらず、その意図、緻密な心境変化を挟むことで深みが増す。
途中で真実に気づき人生の目的を見失うのだが、未来を見るようになって一層強くなったのだろう。
後先考えない復讐より、誰かを守るためという未来まで繋がった復讐の方が強いに決まっているのだ。多分この機転を効かせた考えを思いつく時点で父親を超えた立派な人だし、母への意趣返しにもなっていて良い。(それにしても子どもを守るためにオルガに復讐を誓うシーン、映像が美しすぎてうっとりする。ヴァルハラです。)
こういった心情描写を怠らないからこそ戦いのリアリティが増して胸熱になる。自然美、衣装、人が可能な動き等、素材の味を最大限に活かした映像表現は昨今のCG技術に逆行する形にはなるが、この作品はどの時代にあっても通ずるような素晴らしい作品になっていると思う。

所々のシーンの強烈さにおいては「ライトハウス」の方が決まっていて好みなのだが、全体的な映像の統一感によって鑑賞後の満足度が高かった。
好きな作品だ。
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