Lynne

オッペンハイマーのLynneのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

クリストファーノーランの映画って、時系列をノンリニアにすることによる謎解きの楽しさはあるものの、それを読み解いたところで登場人物たちの心情と結びついている訳でもなく、で?ってなるのであんまり好きじゃないのよね。

それはともかく、オッペンハイマーと当時のアメリカ政府を比較的冷静に描いていて、アメリカの自己憐憫的な映画でなかったのは安心した。故に、オッペンハイマーはまじで1ミリも共感の余地のない、「長所のない」人物だった。

彼の浮気・不倫については「相手が妊娠したから」「自分のことを愛しているから」「夫と別れて寂しそうだから」と言い訳ばかり並べて、自分の行動が人を傷つけるものであると本当はわかっているくせに見ないふりをしている。それって彼の原爆を開発する姿勢と同じだと思う。

自分の研究がもたらす結果なんて分かっているくせに、「ナチスに作らせるわけにはいかない」とか「用途の決定権と責任は僕らには無い」とか、大義名分という名の言い訳を笠に着て、いざ原爆が投下された後に葛藤したところで、キティのセリフを借りるなら「自分で罪を犯したくせにその結果に同情しろと?」となる。ジーンが自殺したときと結局は同じこと。

これを表現するために彼の女性関係のエピソードを入れたんだと思うけど、そりゃあ日本公開も遅れるよねえ。
(日本人の国民感情的には、人類を破滅に追い込みうる兵器を開発してしまった人の取るべき行動は『ゴジラ』に描かれていると思うので)

そして日米の第二次世界大戦を描いた映画の傑作は、『日本のいちばん長い日』だと改めて思いました。
Lynne

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