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オッペンハイマーのkahoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
" Oppenheimer " 日本で公開されて早々観に行った人たちの丁寧に言語化された文を見て、自分はなにを思うんだろうと思い過ごした1週間、ようやく、劇場に足を運べた。
3時間も経ってたんだと思わされるほど、あっという間だった。終わった後、席をしばらく立てない、そんな気持ち。
IMAXでの鑑賞、原爆の強い衝撃、彼の頭の中の大きな雑音、わたしの身体全身を揺らすほどの轟音が鳴り響いた。

この話は、ある1人の科学者の話、だけれど、" 日本、広島、長崎 " そのワードが多く出てくる時、複雑ですごく胸が苦しくなった。それでも観る前からそんなことは分かってた。これは変わらない事実だ。目を逸らしてはいけない、観ないといけないと、絶対に知らないといけない。

美しく並べられた数式は、大勢の命を一瞬にして奪ってしまう殺人兵器になってしまうなんて、とても恐ろしかった。多数の科学者が、人を殺す為に集まり、研究を重ね、成功に喜び合う、その姿。未来には悲劇しか待っていない。そんな未来を彼らは知っていながらも。戦争は、人間を盲目にしてしまう。

アメリカの旗を振り、足踏みをしながら喜ぶ人々の歓声が、彼にとって悲鳴に聞こえたり、皮膚が剥がれていくように見えたり、抱き合うカップルが泣き崩れているように見えたり、彼の葛藤や苦悩、罪悪感までも、完全に分かりやすく見れた。
ならなぜ......って、そんな簡単な話じゃないことも分かってる。こうしなきゃいけなかった、だとしてももっと他に手はあったんじゃないか、「実際に使わないと、人々は恐怖を覚えない」 あの時代の価値観、考え方、だれも止められなかったのだろうか。

原爆の父と呼ばれたOppenheimer、彼1人が全てを、かかえきれないほどの罪悪感を背負っていたけれど、原爆投下までにたくさんの人が関わり、世界に恐怖を知らしめた。決して彼だけではないこと。
彼が涙を流し、大きな罪悪感を抱いていたシーンがあって少しだけ、ほんの少しだけ、救われた。

こんなにも史上最悪な原爆というものを生み出せてしまう人間。わたしたちの住む地球をも、簡単に破壊できるのも人間なのだろう。

今作を観てたくさんのことを考えさせられた。上手く言葉にできなくて悔しい。映画で、知らないといけない歴史を知ることができて嬉しい。興味ない人も、観て欲しい、日本人として、生まれたからには。
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