カイザーソゼ

オッペンハイマーのカイザーソゼのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
ノーラン史上も大変わかりやすい大傑作。
時系列がまざって、、、とか登場人物が多くて、、、という声も当初聞いたが、
一定予習できたら大変明快に楽しめました。

※こちらご参考まで
▼時間がない人のためのオッペンハイマー予習【最低限の知識】
https://note.com/james_miles_jp/n/n6307e8d355bb

抑揚の効いた音楽やよし。
脇役も含めて名優ばかりである。

印象的なシーンがある。

一つが不倫相手だったジーンが自殺(他殺という噂もあるらしいが)した後、それにふさぎ込むオッペンハイマーに妻のキティが
「罪を犯しておきながらそれに同情しろと言うの?」と詰める。
これは何周も回って刺さってくるセリフ。

2つ目は、アインシュタインとオッペンハイマーの会話

Now it’s your turn to deal with the consequences of your achievements. And one day... when they’ve punished you enough... They’ll serve salmon and potato salad, make speeches, give you a medal... Pat you on the back and tell you all is forgiven... Just remember. It won’t be for you, it’ll be for them.
さて、今度は君の番だぞ。君は君が成し遂げたことの責任を取るんだ。そしていつの日か、彼らが君を十分に罰したら、彼らは君を招待して、サーモンとポテトサラダを振る舞い、スピーチをして、君にメダルを与えるだろう。君の肩を叩き、君はもう完全に許されたと言うだろう。でも覚えておきたまえ。それは君のためではないぞ。それは彼ら自身のためなのだ。

これはオッペンハイマー自身のその後についても見事言及しているが、あまりに普遍的に刺さってくる。
どこまでいっても、誰かが本当に許してくれることなどなく(というか許してくれるとは何だろうか、だが)、私にはベクトルは向いていない。
常に「わかっている/許せている自分」にしかベクトルは向いていないのだ。
その厳然たる事実を以て世界と生きていくということ。

見る限りは、原爆開発と投下にいたったプロセスにおいて、
全体的な狂い方、またその時代ゆえの?偏り、そしてその中核にいたオッペンハイマーを擁護するでもなく、やや突き放しつつ
本人のジメジメ反省こそすれ特に具体の変化やアクションもないとう本質的な無反省感を描いているように感じられ、
この映画としてのスタンスは結構クリアだなと感じる。
原爆の描写の有無も、有れば良いものでもないかと思う。
ただ、実験のシーンは映像としてはどうしてもちゃっちかったなあ。。。ツインピークスのアレがやはりもっともインパクトあったな。

気になったこととしては、これをアメリカ人はどういう気持ちで観て、どういう感想を持ったのか?ということ。
これは(原爆を落とされた)日本人とは出発点が違うがゆえに、分かり合えないものなのかなと思うが
それでも本当に気になって仕方がない。
これは、日中戦争にまつわるものを中国の方がどう感じるのかという話にも通じる。
映画は2-3時間のFMTではあるが、どの属性で見るかでも全く変わってしまうのだ。
こんな当たり前のことにも、この映画を見る中で改めて強く意識してしまった。
己に自覚的であるということはこんなに眠っているモノなのだろう。人のことを誰も言えないね。

とかく、史実を描いた映画としても、映画作品としても面白く良い映画。


上記と同じ人のブログだが大変大変参考になった。ありがたかった。
▼時間がない人のためのオッペンハイマー予習【最低限の知識】
https://note.com/james_miles_jp/n/n6307e8d355bb
▼【オッペンハイマー】徹底解説:アインシュタインとの会話
https://note.com/james_miles_jp/n/n9f38225a61cc